よろしい、ならば退散で(笑) 【鬼滅の刃】

陸 ページ6

無惨視点









そいつは
不思議な奴だった









その日私は何年か前に襲った炭売りの家に立ち寄り、部屋を見渡した
もうあの日から家は使われていないようで、床に残った血はこべり付き 何とも言えない匂いが漂っている

家の近くには人が埋葬された形跡があり、親戚辺りが見にでも来たのだろうと思った
そう言えばこの家の子供を一人鬼にした記憶があるが…血に耐え切れず死んだか



別にこの家をわざわざ見に来た訳ではない
少しこっちの方に用があり、ついでに立ち寄っただけ

鬼にした子供が家族でも食い荒らしていたら暇つぶし程度にはなったが…
とんだ時間の無駄だったな

歩いた道を引き返してそこそこに険しい道を歩く
近道をするため、道無き道を行き 草を掻き分ける






…嗚呼、稀血の匂いだ

歩くに連れ匂いは濃くなっていく
これほどの稀血は何百年ぶりだろう

見つけたら直ぐに食らいついてやろう
そう心に決め、雪が積もる山道を歩く


音を立てながら草むらを抜ける
少し開けた所に出て稀血の子供が目の前にいた




あれほど心に食うと決めていたはずなのに
この子供を目の前にして背筋が凍る

いつかの "彼奴" を思い出した

私はこの子供を、恐れているのだ


額に炎の様な痣があり
無造作に伸ばされた黒髪
何もかもを諦めた様な死んだ目

嗚呼、まさか
ここで会うとは…


腸が煮えくり返ると思った
でも、怒りより恐怖より

悲しい様な…懐かしい様な感情に囚われた


不思議と殺す気にはならなかった
顔も姿も存在さえも消してやりたくてたまらなかったが殺せなかった

女とは思えない姿だな
次会う時はもう少し女らしくなっているだろうか


だが次会う時は

お前が、"鬼" になる時だ





黒死牟と同じ…



"彼奴" と同じ


痣を持つ者よ









これは
もう数週間前の話だ

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