2リヴァイ兵士長 ページ10
「お前は？」
今度はロルフが同じ質問を私にした。
その問いかけに、わかっているのにわからないふりをした。
「なにが。」
「お前はなんで調査兵団にしたんだよ。」
「俺は……。」
多少間を開けて、私は当たり前のように言った。
「そりゃ、人類の進歩のためだろ。」
「相変わらず、息をするみたいに嘘つくのな。」
奴の指摘には反応しない。
“息をするみたいに嘘をつく”ことを否定するつもりはないが、肯定するつもりもない。
「まあ、本当は調査兵団の腕章が一番カッコ良かったからなんだけど。」
「なるほど、お前が本当のことを言うつもりがないことはわかった。」
適当な返答を繰り返す私に対し、呆れたようにロルフは呟いて、深くは追求してこなかった。
その時、食堂の空気が少し変わった。
「あ、リヴァイ兵長。」
「げ、どこ？」
「あそこ。」
ロルフの指差す方向に、奴はいた。
丁度食堂へ入ってきたところだった。
奴の姿を確認し、私は苦虫を潰した様な顔をする。
「何度見てもあの人だ。」
「まさかお前が失態した相手があのリヴァイ兵長だったとはな。」
「1旅団の兵力持つ奴があんな背低いとは思わねえよ。」
ったく、紛らわしい身長しやがって。
奴の視界に入らないよう、無意識に姿勢を低くした。
私の行動を、特に気にするでもなく、ロルフは頷く。
「確かにギャップはあるな。」
「ありまくるよ。俺もっとムキムキマッチョを想像してた。」
「失望した？」
こちらを覗き込むように、ロルフが尋ねてきた。
「いや、別に何も感じないけど。」
そんな会話中、ふと奴がこちらを見た。
目があった気がしたが、気のせいだと思う。
ここに人はたくさんいる。
「リヴァイ兵長、お前のこと覚えてんのかな。」
隣のロルフも視線を感じたのだろう。
唐突に聞いてきた。それについて私は素直に思ったことを言う。
「忘れてるだろ、1ヶ月も前のこと。」
正直、あの直後は、あんなちっさい奴どうせ早死にしそうだから気にすることないと思っていた。不謹慎だが。
しかし奴がリヴァイだと知って、その線の可能性は低くなったわけだが、あんな有名人が一人の新兵をいちいち覚えているとも思えなかった。
「あれ以来話したことねえしな。」
開き直ったように言う私にロルフはツッコミを入れた。
「そりゃあお前が全力で避けてるからな。」
奴が幹部の集まる席に着いたのを見届けて、私は静かに席を立つ。
「じゃ、もう寝るわ。」
「おう、おやすみ。」
不自然にならない程度に、遠回りをして、私は食堂を後にした。
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作者名：わか | 作成日時：2019年9月16日 16時
