6班長 ページ7
その言葉に、耳を疑う。
「初列？一番端？」
私は思わず身を乗り出して問い詰めた。
「ああ、多分。」
「新兵なのに？」
「まあ、実力はあるからなあ。」
ぽりぽりと頬をかきながらそいつは言う。冗談ではなく、本気でそう思っているのだろう。
特に否定せず私は言った。
「お前大丈夫か？」
「なに？心配してんの？」
質問しまくる私が珍しいのか、そいつはニヤリと笑って茶化しにかかる。
そこで私は適当に後から付け足した。
「いや、頭……。」
「頭の心配かよ。」
私の誤魔化しを察して、そいつは言った。
「まあ、班員もベテランの人ばっからしいし、大丈夫だろ。」
その時の会話はそれで終わった。
正直、私は深く考えていなかったのだ。
私は最悪の可能性を考えていなかった。
新兵が最端を任される事に、多少の疑問は持ったものの、どこかでは安心していた。
訓練兵時代、群を抜いてトップだったこいつなら、大丈夫だと。
そんな保証、どこにもないのに。
誰しも人は、最悪のケースが、まさか自分に降りかかるなんて、思わない。
……実際にその局面に立つまで。
その数分後、私は自分の班と対面し、肩を落とした。
まじかよ……。
「おお、来たか新兵。」
「……はじめまして。」
「昨日も会っただろ。」
「そうでしたね、ハハ……。」
私の班長は、昨日のあの酔っ払いオヤジだった。
ディータ・ネス
髭面のせいか、かなり年上に見える。
昨日のこともあり、正直いい印象はなかった。
しかし、どうやらシラフではかなり頼りになる人物らしい。
熱心に長距離索敵陣形についてを説明してくれる。他の班員との信頼も厚そうだ。
私は1ヶ月後、この班で壁外へ行く。
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作者名：わか | 作成日時：2019年9月16日 16時
