E G O 【levi】 (ページ44)

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6一人称ページ44

自室へ入り、抱えたそいつを少しためらって自分のベットに寝かせる。

「ったく、めんどくせえ。」
「……すみません。」
「……。」

独り言に返事が返ってきたことに少し驚いた。
いつの間にやら起きていたらしい。

「気分はどうだ？」
「なんか、酷く暑いです……。」
「そーかよ。」

俺の質問に対する一番に帰ってきた言葉が、吐き気などではなく体温についてな事に安堵する。
その様子から、多少酔いは覚めかけているようだった。

「俺、自分の部屋に戻ります。すみませんでした、ご迷惑を……。」

そう言って身体を起こそうと試みるティルだが、すぐに呆気なく崩れ落ちた。

「そんなフラフラで戻れるわけねえだろ。それともなにか？お前は自分の部屋まで俺に運ばせる気か？」
「いや、その……這って……。」
「黙って寝ろ。」

俺の言葉に、そいつは再び眼を閉じた。
寝ているのか起きているのかわからない。
しばらくして、掠れた声が聞こえた。

「……暑い。」

ボソリと呟かれた言葉は心底辛そうだった。
俺は奴の顔を覗き込み問いかける。

「水でもいるか。」
「……あ、いや、だいじょう……ぶ……。」

途切れ途切れの返答。
聞き取るのが困難だった。

「他に何か欲しいものは？」
「なら、……あの、手を……。」
「手？」
「手を……握ってて……。」
「……。」

震える声で呟かれた。
予期せぬ出来事に少し固まる。

しばらくして、俺はそっとそいつの手の上に自分の手を重ねた。手の甲さえ、酷く熱い。
それを合図にティルは再び口を開いた。

「ごめん、なさい、わがまま言って……。」
「……いや。」
「やっぱり、私、貴方がいないと……。」
「……。」

そいつの一人称の変化を、俺は聞き逃さなかった。
朦朧とした意識の中、こいつは今、自分を女として呼んでいた。

そちらの方がいいと、徐々に涙が溜まっていくそいつの目元を眺めながら思った。
そして、次の瞬間、俺は何とも言えない感情を味わう。

「ありがとう、ロルフ……。」

酷くか細く呟かれた最後の言葉は、この静かな部屋の中では十分に響き渡ってしまった。
そいつの頬を流れる水滴を指で拭ってやる。
一度だけ拭ってもそれだけでは足りずに、数滴のそれが俺の枕を濡らした。

朦朧とした意識の中、こいつが今呼んだ人物は目の前にいる筈の俺ではなかった。