E G O 【levi】 (ページ43)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:3,195 hit

5熱ページ43

「ティル、おいティル。」

俺の呼びかけに、そいつは眼を覚ますどころか寧ろ微かに微笑んで意識を手放した。
すぐに少し息の上がった寝息の音が聞こえてくる。その顔は赤く、心なしか辛そうに見えた。
そっと頬に触れると、かなり体温が高かった。
それはどうやらアルコールせいだけではないようだった。

「おい、ティル、起きろ。部屋に戻れ、熱がある。」
「あー、どーりで……。」

起きているのか寝ているのかわからない様子でそいつは答えた。相変わらず目は開いていない。

「お前、自室はどこだ？」
「……女子棟です。」
「んなことわかってんだよ。女子棟のどこだ？同室の奴の名前は？」
「えーと……、左側？名前は、なんだったかな。」
「……。」

そこで会話は途切れた。
結局こいつの部屋がどこのかも同室の奴の名前も聞くことは出来なかった。
俺はその場で立ち竦む。

さて、こいつをどうするか。

こいつよく話しているのを見かけるペトラに任せるか。
いや、ペトラが同期でもないこいつの部屋を知っているのか。そもそも病人という厄介者を歓迎会を楽しんでいる部下に押し付けるのもどうか。

こいつの班長のネスは……。
酔っ払いを酔っ払いに任せるわけにもいかない。

ハンジ……。
あいつに病人の介抱が出来るのだろうか？
いや、恐らくあいつはこいつの世話を俺にやらせる方向に話を進める恐れがある。

そこで俺はそれ以上考えるのをやめた。
どれだけ考えても適任を思いつきそうになかった。そもそも、別に無理やり誰かに押し付ける必要など無かった。
自分がその役をやる事を、あえて避けること自体が可笑しかったのだ。

そうして一つため息をつき、俺はそいつを抱き抱えた。

こんな時、もしあの男がいたら、当たり前のようにこいつを連れて行くのだろうと、そんな事が頭に浮かんだ。