E G O 【levi】 (ページ32)

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4無自覚ページ32

「え、リヴァイ、兵長？」

恐る恐る、私もその名を呼びながら、その人物の顔を覗き込む。自分でその名を呼びつつ、そうであって欲しくないと願っていた。

この感じには覚えがある。

「……チッ、馬鹿が。」

その舌打ち、声、眉間のシワから、自分の過ちを自覚した。

「うわ、本当だ。」
「ああ？」

思わず項垂れる私を、そいつは強烈な眼光で睨みつけた。またやってしまったのだ。
やっとあの時の過ちが白紙に戻りそうな頃だったのに。

「すみません、ほら、あの、いつもと全然雰囲気が違くて、服とか頭とか……。」

慌てて弁解をするも、最早何を言っても手遅れな気がする。

「お前が俺を何で認識してんのかは知らねえが、上官の顔くらい覚えておけ。」
「す、すみません。」
「……いくぞ、エルヴィン。」
「ああ、じゃあティル、失礼するよ。」
「ハッ！行ってらっしゃいませ！」

今までで一番立派なのではないかという敬礼をし、2人が見えなくなるまで見送った。

……

「はっはっは！！」
「ハンジさん、笑いすぎです。」
「だって！正装のリヴァイを貴族の子供と勘違いして挨拶を注意したって！面白すぎるよ！」
「……。」
「ごめんごめん、いやあティル、君やっぱ面白いね。」
「俺は馬鹿にされているのでしょうか。」
「いやいや、寧ろ褒めてるよ。」
「褒められている気がしません。」

そんな会話をしながら、私は溜息をついた。
この人を風呂に入れに来た筈が、いつの間にやらすっかり雑談をしてしまっていた。

「まあ、リヴァイの奴も行く前にそんな事あったんなら少しは気分が晴れたんじゃないかな。」

笑い涙を拭いながらハンジは呟いた。
その言葉に、私は疑問を投げかける。

「接待とはそんなに嫌なんですか？」
「んー、まあ支援してくれるよう貴族相手にご機嫌とりをするわけだし。それにリヴァイは少し女性からの人気もあるからね。」
「なるほど。」
「……気になるかい？」

納得する私の顔を覗き込むように、ハンジは言った。その質問に首を振って答える。

「え？いえ、全く。」
「そう？何か浮かない顔をしているように見えたから。」

彼女の指摘を、単純に疑問に思った。

「え、そんな顔していました？俺。」
「うーん……。」

私の答えに、ハンジは少し考えこむような態度をとる。その事を深く気にせず、私はボソリと呟いた。

「兵士なのにただ戦っているだけじゃダメなんですね……。」
「まあ偉くなればそれなりの仕事が任されてくるからね。」

その言葉に、この時の私は他人事のように、ただ“大変そうだなあ”と思っただけだった。