君の瞳に映るモノ。 (ページ9)

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なぜだろう。
彼女はまだ年端もいかない少女なのに

なぜか...自分と似ている気がしてならない。

互いに分かり合えるような、
それでいて勇気づけあえるような。

何の根拠もない。
彼女と話したのもついさっきだと言うのにーーー

互いに決定的な言葉は出さないけれど
同じ空間にいて、感じるこの空気がそう感じさせる。

『...先生は、愛を感じる瞬間、幸せな思い出はありますか？』

Aは伏せていた視線を私に合わせて、そう尋ねた。

「そうだね...辛いものの方が多いけれど、そうじゃないものもいくつかあるよ」

狼の宿命を背負いながらも、それを理解して力になってくれた両親や、友人たちとの過ごした時間。

たとえその先に裏切りや死別があったとしてもーーーー

私が地下に潜らず、こちら側で生活できているのも、その思い出のおかげだと思う。

『今日、ボガートの授業のとき、私の恐怖は"闇"そのものでした。まっくろの...』

彼女の言葉に耳を傾け続ける。
そうだ、たいていのあの時期の子供らしくないとは思ったーーー

『本当はハリーと同じで、ディメンターが出ると思ったんです。...私ディメンターのキスを、受けたから...』

「！？」

『それはマズイと思って、漠然とした闇を意図的に...』

「だが、それならなぜ君は...」

『兄のおかげで...生きています。肉体も精神も。ただ、吸い取られた幸せな記憶は戻らなかっ...』

顔色ひとつ変えず話していた彼女の瞳から、涙がツー、と流れ、彼女もそれに気づいたのだろう、その瞬間言葉に、詰まった。

『..っ、ディメンターを、やっつけたいのに...っ、パトローナス、呼びたいのに...奴らのせいで私っ...ふ、』

『何度もやってみた、兄が、教えてくれた通りに、でも！他の魔法はうまくいくのにこれだけは...っ、先生、どうしてできないの...？たいていのことはうまくやってきたのに！！』

あぁ、そうか
やけにAの杖捌きが見事だった理由はーーーー

悔しそうに、やりきれない気持ちで
顔をクシャクシャにゆがめる彼女の泣き顔に

もうあの大人びた面影はどこにもなかった。