【npl】愛色図書館【短編集】

＊ ページ19

蘭たんは魔法少女だった。
生物学上は男だし、自身の認識としても男だった。
しかし彼はある日突然魔法の力を手に入れた。彼がマジカルステッキを振ると、たちまち美少女に変身した。この力で世界の平和を守ってくれだと。ポポロンやらトゥットゥルンやらそんな名前の使い魔たちが教えてくれた。それが魔法少女ミンキーピンキーの誕生の瞬間だった。
面倒くさいと思っていた魔法少女の仕事も、慣れれば案外楽しかった。
そんな非日常が日常へと変わろうとした時期に、彼女ーーAが魔法少女仲間として紹介された。
魔法少女にどこまでも夢を見た未成年の彼女が、蘭たんはまぶしくて、ちょっと鬱陶しくて、それでものすごく大切だった。
好き、の感情になりかけていたのかもしれない。
それでも蘭たんは、ミンキーピンキーは、Aに自分の正体を明かさなかった。
それは子供の夢を壊すまいという大人の気遣いでもあったし、自分の正体を知った彼女に嫌われたくないという男のエゴでもあった。
だがそんな気遣いやエゴを、蘭たんは自分で壊してしまった。ちがう。壊してでも守りたいと蘭たんは考えたから、壊したのだ。
ある日、魔法少女としての仕事が終わった後に、Aに言われたのだ。
「ミンピンちゃんのおうちに行ってみたい」
それはAからの親愛の証だった。そんなこと、男である蘭たんでもわかった。
ーーチャンスだと思った。
Aに魔法少女をやめさせる絶好のチャンスだった。

＊→←夢を捨てて生きる【lntn】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す