第38話 ページ40
気がついたら、私はトレーニング用の部屋で気を失っていた。あれから、そんなに時間はたっていない。
『ズキッ)!!』
電話をかけようとして、突然あの痛みに襲われた。
今は、心臓も何ともない。何だったんだろう?
でも......、とても.......懐かしくて、暖かくて、それでいて泣きそうな思いをした気がする。胸が痛くて、苦しくて、でも愛おしい。よく分からない、けど......そんな感じがするんだ。強く、強くとても強くそう思った。
《♪〜》
床に出していた私の携帯電話から電話の着信音が聞こえた。
相手は、亮悟さん。
『《もしも.........》』
「《彼方か!?》」
慌てた様子の亮悟さん。
『《そうですけど、どうしたんですか?》』
「《急いでこい!!ろくろと紅緒さんが病院に運ばれた!!》」
『《えっ.....?!》』
亮悟さんの話によると、ろくろと紅緒は予想通り、悠斗と戦って禍野に倒れているところを陰陽師の人、十二天将の人に見つけられ、病院に運ばれたと。命に別状はない。
『(よ、良かった.......)』
あの時からあった、胸のモヤモヤはもうなくなっている。一安心だけど、スゴく心配なのは変わらない。
亮悟さんからの電話をもらった後、急いで病院に向かった。
───────────
一週間。
ろくろと紅緒があの晩、悠斗と戦い病院に運ばれてから一週間もの時間がたった。その間、清弦さんや繭良、紅緒も既に目を覚ましている。だが、ろくろだけは未だに目覚めてない。
私と亮悟さんで交互に一日に付き添っている。
たくさんの人が、ろくろの病室に訪れては、心配してくれる。
ろくろが目覚めないなか、悠斗を討伐するためにやって来た十二天将方達の四人に会ったのだ。挨拶をした時、皆さん驚いた顔をしていた。何か粗相をしてしまっただろうかと思ったが、すぐに戻り自己紹介をしてくれた。怖い人達なのかと思っていたら、皆さん優しい人達でそして、最後の一人には驚いた。
『あ、あの時の......!』
「......あの時は迷惑をかけたな」
なぜなら、会った人が先日道端であった車酔いの青年だったからだ。
″朱雀″斑鳩 士門さん。
改めて、挨拶と御礼を言った。
彼が、ろくろ達を病院まで運んでくれた人と聞いたからだ。
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作者名:夏菜沙 | 作成日時:2021年7月12日 20時