◇風邪引かないように ページ23
noside
「え、先輩？何でここにいるんで─────」
『ｽｩ).....』
「！.....湖羽先輩寝てる？」
前の日から寝不足だった湖羽は、眠気のピークにより学校の中庭にあるベンチで眠ってしまった。眠気の原因として、彩芽からのマフィンもあるだろう。いつも身につけている白のパーカーは着ていない。洗濯が間に合わなかったのだ。他のパーカーを着てこようとしていたのだが、普通に着てくるのを忘れた湖羽は、学校に着てから気付いた。
もう11月と冬に近付いてきていて、外は寒い。今日は比較的暖かいが風邪を引くかもしれない。真波はこの後、三年生追い出しファンライドがあり自転車に乗って、レースに参加する予定だ。
「風邪ひきますよ〜？」
『ｽｩ).......』
「(先輩、起きない)」
声をかけても起きない先輩。
ここで寝たら、風邪をひいてしまうだろう。それにこんなにも無防備な湖羽をおいて行くというのはなんとも良くないと真波は思う。ついこの間も告白されていた湖羽、ここで自分がいなくなったら他の人が来るだろう。
無防備な湖羽を置いていけないと、彼女の姿を見せれないと思った真波は自身のリュックを湖羽の隣に置いた。チャリ部のジャージの上着を出して、膝にかけ、持ってきていたブレザーを肩からかけた。小柄な湖羽にはブレザーは大きい。着たらブカブカになる大きさで、すっぽりと収まってしまう。
「(......先輩やっぱり女の子なんだ.....)」
決して、湖羽の事を女の子じゃないと思っていた訳ではない。エースとしてチームを鼓舞している湖羽、真波の憧れで、いろんな人を惹き付ける魅力を持つバレーバカな湖羽を見ている真波からしたら、大きな存在感がある。でも、寝ている姿は普通の女の子。バレー部のエースだなんて言われても驚きそうなぐらいの見た目。
「後で取りに来ますからね。風邪ひかないようにしててください」
『.......』
遅刻魔でも遅れないようにしないといけない真波は、湖羽が起きるのを待つ時間はない。今日は三年生との最後の勝負、負けるわけにはいかないのだ。湖羽のお陰で無茶な練習はしなくなったものの真波の苦悩は決して軽くなった訳ではない。それを湖羽も東堂達も気づいているが、黒田達この先の箱学を担うメンバーが何か言うだろうと託しているのだ。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2022年11月28日 21時
