【鬼滅の刃】そこで見つけた六花ノ景色 (ページ32)

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第9話　藤ノ花と最終選別③ ページ32

『綺麗』

その場所は、藤の花で咲きほこっていた。
目を奪われるほど、綺麗な藤色が視界いっぱいに広がっている。

私が生きてきた中で、こんなにも藤の花を見るのは初めて。
椿や桜は見るんだけどね？

師匠の家には一、二本しか藤の木はない。
こんなにも辺り一面藤色なんて、初である。

「綺麗なのはわかるが、集まるのはここではないぞ」

『え？』

「あっちの方だ」

突然、後ろから声をかけられて後ろを振り返れば、狐のお面を着けた私よりも年上そうで、身長は余裕で高い少年達がいた。

『あ、ありがとうございます』

「いや、何て事ない」

「藤の花、綺麗だよね」

『う、うん』

藤の花に見とれて、集まる集合場所ではない所にいたため、彼らがわざわざ教えてくれたのだ。慌てて辺りを見て、彼らにお礼を言うと気にしてないと言われた。黒髪の少年が、優しい表情で話しかけてくれた。

この二人、いい人だ。

『私は、仁樋咲々芽と言います。わざわざ教えていただきありがとうございました！』

「錆兎だ、別に気にしなくていいことだ」

「義勇.....冨岡義勇。俺も藤の花にさっきまで、目奪われちゃってたし」

『おお、同じ人いた』

宍色の髪をした頬に大きな傷のある少年が、錆兎で黒髪の素直そうな少年が義勇。二人とも狐のお面をしていて、同じ育手の元で修行したもの同士だそうだ。因みに二人とも予想通り、私よりも上で顔面偏差値の高いイケメソになること間違いなしである(その予想は、数年後に当たることになる)。

『(人.....いっぱいいる)』

ここが試験の会場らしい。
藤の花は、やっぱり咲いていて、圧倒されてしまうのは変わらない。雰囲気もペラペラと何か話すことができないような感じで、黙ってここまで歩いた。

炎柱さんは隊服を着ていたが、今の私はまだ隊士ではないので、師匠からお借りした袴を着ている。ブーツ履いて、動きやすさも問題ない。

「皆様」

『！』

「今宵は鬼殺隊最終選別にお集まり下さって、ありがとうございます」

そんな声が聞こえてきたため、ここに集まった全ての人の視線が、そちらの方へと集まった。それと同時に、今まであった緊張感が、更に増していくのが伝わってくる。

いよいよ、始まってしまう。

『(必ず生きて帰ろう)』

師匠が待ってるんだから。

　