第8話 冬の呼吸�� ページ29
最近始めたお散歩。
雪の中、呼吸を駆使して山を散策し何か呼吸のヒントになるような事や気分が晴れるかなって新たなインスピレーションを求めている。でも、雪が積もらなくなったら、春のモノ探しとかに変更になっちゃうかな？
暖かい格好をして、ここ最近愛用している羽織を着ていつもと違う道を歩くのも、もう少しで終わり。
『(寒いなぁ......でも、鬼の出ない日が出てる時間帯だから自由でいられるよね。春も近いし、雪景色は見納めになっちゃいそう)』
ザクザクと小さく聞こえる雪を踏む音。
視界は白く染まり、「世界が違う昔の日本だぁ」と何故か懐かしくなった。懐かしくなるのと同時に、前の世界が恋しくなる。恋しくて、恋しくて.....。
ぱちんっ。
頬を叩いて、その気持ちを一旦吹き飛ばした。
こういう事考えていると、止まらなくなっちゃってもっと悲しくなってしまうから。
切り替え切り替え！
『【あ】』
歩いて見えた赤に似た花。
隣には白い花があって、同じ種類のものであることはわかる。
『【確か、山茶花だよね？久しぶりに見たかも】』
なんか、前世でも見ていたはずなんだけど、どうだったかなぁ？
小芭内さんと見た山茶花も、あの日と同じようにその部分だけ、スポットライトが当たったようにキラキラして見えた。
なんでだろう？
どうして、こんなにもに.......、
ﾋﾞｭｯ。
『！』
風が吹いた。
優しいのに弱々しくないそよ風。
『【.....あ】』
その風は、私に何かを伝えてくれようとしている。
確証も何もないのに、何故かそう思ってしまった。ただの思い込みかもしれない私の思った事。間違いかもしれないのにそう思って、声に出していたら間違いなく黒歴史だ。
でも、
『【ああ、私の呼吸は......】』
きっと、これだ。
風が巻き上げた地面に積もる白。
光を反射して輝る視界一面を覆ってしまう雪。
頬を少し撫でた肌寒い風。
私の目についた山茶花。
それは全部全部、この季節であるから見れる景色。
この景色が、光景が、見れるのは、この季節だけだから。
『【決めたよ、決めた】』
私の呼吸。
私が考えて生み出す、私だけの呼吸。
『＿＿＿＿＿＿冬の呼吸』
あ、声出た。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2023年4月15日 14時
