◇一目惚れ ページ42
尽八が走り去った後、少しの間惚けてしまっていた。ハッとして、興奮冷めやらぬ私は隣にいる千歳に声をかけた。
『ねえ、千歳』
「.........」
『千歳?おーい.....!』
「........」
『聞いてますかー?おーい』
「千歳ちゃん?」
声をかけても反応無し。
先程、尽八が走っていた路面を見つめたまま千歳は固まっている。さっきの私みたいな目をしていて、意識をこっちに戻そうと思い彼女の肩をトントンと数回叩く。潔子も心配して声をかける。
『ちーとーせー』
「ハッ!)......あ、えっと、二人とも.....?」
「大丈夫?千歳ちゃん」
「う、うんっ.....。ダイジョブ.....」
意識が戻ってきた千歳は大丈夫だと言うけど、絶対に何かあった。チラチラと路面の方見てるし.....。
「......もしかしてなんだけど.....」
『私もそうかな?って思った』
潔子と千歳を見ながら、こそっと話す。
彼女も私と同じような事を思っていたらしく、頷いて千歳を見れば何かを思い出して、ぼーっとして。
『.....惚れたの?』
「えっ!?」
「さっきの一番の男の子に」
「あっ!?えっ.....!!」
『尽八.....、東堂尽八に惚れちゃった.....?』
「っ.....!!!?」
私の言葉に千歳は分かりやすく頬を染めた。いや、染めたって言うか、顔全体が真っ赤になった。「潔子、これは決定だね」「うん、そうみたいだね」と恥ずかしそうに図星をつかれたうちのセッターは視線を地面に向けた。
「ロードレース観るのは始めてで」
『私は数回観たことある』
「私も」
お父さんに連れられてね。
「(前世では知ってたけど)自転車競技の迫力も熱気も、感じるだけでワクワクして」
『わかる』
「それで.....さっき......、観た、と.....と....東堂君の.....走りに.....目が、奪われて......カッコ良く.....てっ.....」
『.....一目惚れってやつ??』
「......う、うん.....」
あ、甘酸っぱいっ.....!!!
テレテレして、乙女の表情(恋する少女)にたった数分で変わった千歳。これは決まり。千歳は尽八に確実に惚れたね。本人も自覚済み。
『あのね、千歳、潔子』
「何?」
恋する千歳と何かを察した表情をした潔子に向き直る。
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夏菜沙(プロフ) - 教えてくださりありがとうございます!直させていただきました。 (2022年4月12日 10時) (レス) id: 6b5f9c4200 (このIDを非表示/違反報告)
綴(プロフ) - フォーカーフェイス…ポーカーフェイス?? (2022年3月21日 12時) (レス) @page15 id: cfde1fd93c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏菜沙 | 作成日時:2021年8月25日 19時