◇キエテシマウノハ ページ41
大崎彩芽side
「.......っ」
「彩芽さん」
「！黒田君、どうかしましたか？」
週末の自転車競技部の練習。
三年生は引退ということだが、受験勉強の息抜きで東堂君達は部室に来る。それは私も同じ。湖羽さん達は冬休みの終わりに春の高校バレーがあるためまだまだ部活中である。
たまにバレー部のお手伝いに行かせてもらうが、体育館の端から見る湖羽さんはかっこよくて、休憩中の湖羽さんもカッコいい。練習中はポニーテールなのでいつもと違う髪型の彼女が見れるのはファンとしては嬉しい。
「難しい顔してますよ」
「え？.......それはすみません」
「いえ、葦木場も東堂さん達も同じような表情してますし.....俺も先輩達が何でその顔してるのかはわかりますから」
「.........黒田君も彼女達とは付き合い長いですもんね」
「片方は身内っすから」
難しい顔をしてる事を指摘してくれた黒田君。
彼の言う通り彼の表情も暗い。
理由はわかっている。
この時期になると湖羽さん達と関わりのある一部のメンバーは言葉では表せないような不安な感覚を覚えるのだ。それは二人と出会い入学した毎年この時期に嫌なぐらいに感じてしまう。
湖羽さんと千歳さんが消えてしまうような感覚。
「怖いぐらいに二人ともどこかに行ってしまいそうなんですよね.....。特に湖羽さんの方は.......」
本当に消えてしまいそうで.......。
「二人はいつも通りなのに俺達だけそんな嫌な感覚を一週間くらい感じて」
「
「「東堂君(さん)！！」」
黒田君と話していればいつの間にか東堂君達が来た。
制服に着替えて登校する気満々のいつも通りの東堂君の後ろには新開君達もいた。.......真波君は当然遅刻。
「湖羽はあんなにも運動神経はいいのに階段で落ちそうになる。それにこの時期は嫌な感覚が来るからいつもより何倍も気をつけねばならん」
「一週間が終われば、こんな感覚綺麗さっぱりねぇのにナァ.....？」
「そうですね。すっきりした気分になりますよね」
湖羽さん、千歳さんが消えちゃうような感覚は一週間ぐらい続く。一週間終われば、いつも通りの日常に戻るのが不思議だ。今年で三年目。黒田君や中学からの交流がある東堂君は、三年以上だ。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2022年12月25日 19時
