◇エースとして ページ19
誰もいない通路。
周りには誰もいなく、この場には私だけ。
私の頭に浮かぶのはたった今終わったばかりの試合。決勝戦が始まる瞬間から、最後のボールがこちら側のコートに落ちる瞬間。打ったと思ったボールが次の瞬間、自分の後ろに。
私のスパイクが止められ、勢いが強く後ろに飛んだところ。桜良達が走って、手を伸ばしレシーブをしようとしてるが、届かなくて、ボールは白線の内側へと入った。
後ろから感じる気配。
足音が近付いてきて、少し離れた位置で止まる。
『.....最後、決めれなかった.....』
「......」
『.....千歳のトスも完璧で、私のタイミングもジャンプも完璧だった.....!いけると思った....!.....でも、ダメだった....』
「.....っ.....!」
私は振り返り、後ろにいた.....、千歳に叫んだ。
『重要な場面で、あの場面で決めれないなんて.....!!何がエースだっ!!大切な場面で決めれないなんて、エースじゃないっ!!!』
声を荒らげて、叫ぶ私の目には涙。雫が、頬に伝って流れていく。無意識に握った手は小刻みに震えていた。エースとして、あの場面で決められなかった。
悔しい.....!!
悔しい、悔しい、悔しい、悔しいっ......!!!!
『.....悔しいッッ!!!!』
後悔の残る試合だった。お祖父ちゃんが言ってた通り、後悔の残らない試合なんてない。後悔だらけだ。
『.....っ、づぎは.....!!!必ず勝つっ!!!.....っ.....う゛ぅ.....ぁぁぁぁ....う゛っ.....ヒクッ.....づぎば.....決める゛っ!!!エ、エースの私が決める....よっ.....!!』
「うん......うん、......っ.....ヒクッ....う゛んう゛んう゛ん.....!」
流れてくる涙は止めようとしても止まらなくて、私の弱いところが涙と一緒に流れてきちゃう。なら、今だけ許してくれるのだろうか。今だけ、弱音をいっぱい吐いて、泣き終わったら前へ進もう。
『......もっと.....翔ぶ....』
「.....湖羽、らしい....ね」
翔ぶことに後悔をしない。
試合で後悔を残さない。
きっと、後悔を残さないはできない。
けど、私の全部を出しきる。
次の大会、春高では私のもつ全てを試合にぶつける。
優勝を勝ち取る。私達の全てをぶつけ、絶対に優勝をする。
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マシュマロ。 - 月が綺麗ですねって、なんで気付かないんだろ〜〜。私も気付かない気がするけど… (2022年11月26日 17時) (レス) @page13 id: 5bbebede5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏菜沙 | 作成日時:2022年11月20日 0時