09*(やりたい事) ページ27
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貴「…あぁー」
爽快だとは言えない朝。
液晶画面が光続ける携帯を恐る恐る手に取る。
猩「さっさと来なさい」
聞こえた声は一瞬で、画面が暗くなったと同時に猛スピードで身だしなみを整えだした。
既に姿の無い高杉の着物を適当に手に取り袖を通す。
女物の着物なので着れない事も無いがやはり少し大きい。だが、そんな事を気にしている暇は、今のAには無かった。
ガチャ キーー
貴「…遅れましたァ」
第四師団の船に戻ると息はすっかり上がっていた。
恐る恐る覗くように扉を開くと、無数の目がAに向いた。
その視線にビクっと肩を揺らし、引き返す事を考えると同時に、止める様な鈍痛が走り座り込む。
貴「ッ痛ったァ」
猩「この馬鹿ッ」
猩「遅れるなって言っただろ!!!」
その予想通りの声に俯いていた顔を上げると、そこにはやっぱり予想通りの猩覚が立っていた。
苦し紛れに「パワハラ」なんて言ってみるけど、「上司はテメェだろ」っともう一発食らった。
貴「…ごめんなさい」
猩「謝る相手が違ェだろ」
引きずっていた着物も直され、半ば強引に部屋の中央に立たされる。
望んでもいない見通しのいいその場所からは、50人弱の天人や人間が居た。
猩「今日から第四師団員になる奴らだ」
猩「前にいる4人は辰羅族と夜兎族」
猩「この中では段違いの強さで、」
猩「まァ秘密兵器と言ってもいい」
淡々と説明し終った猩覚がAの背中を押す。
強制的に1歩前へ動かされたAの手には、また強制的にマイクを持たされた。
貴「…えっ、と」
貴「第四師団の団長を遣らせてもらってます」
貴「白雪Aです」
猩覚への恐れか、冷や汗が止まらない。
必死に言葉を探すが、寝起きという事もあり何も浮かばない。
バンッ
貴「頑張りましょうっ…!!!」
限界を迎えたAはマイクを投げ捨てそう叫び、逃げるように部屋を出て行った。
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作者名:み子 | 作成日時:2016年7月26日 20時