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猩「とは言ったものの、気になって眠れねェ」
猩「だかたちと付き合え。阿伏兎」
阿「何時だと思ってンだ」
猩「宇宙に朝も夜もねェよ」
阿「それでも時間はあんだよ」
その夜中。寝付けるはずも無く、阿伏兎の部屋へ訪れては強引に叩き起こした。
猩「それでお前ェなんか心当たりねェか?」
阿「お前が無いなら無いだろ」
猩「神威と何かあったとか」
阿「知らねェなァ」
欠伸交じりに返事をする阿伏兎に多少のイラつきを憶えるが、今はやはり、Aのことが気がかりで酒と共に流す。
猩「はァ、……」
猩「今までこんな事なかたんだァ」
阿「そうかい」
猩「飯は無理強いしたら食べてた」
阿「無理強いは良くねェだろ」
猩「おやつだってしっかり」
阿「おやつって、・・・いくつだ」
猩「酒は控えろと言ったけど、」
猩「呑んでる時が心底幸せそうだったから」
猩「A好みの酒を取り寄せたのも俺だ」
どんどん床へうな垂れて行く猩覚に、阿伏兎は哀れみの眼を向けるが、頭の中は少々違う事を考えていた。
猩「うぅ、……」
阿「今度はなんだ」
猩「阿伏兎ォ、」
猩「これは俺のあくまでも」
猩「そうっ、あくまでも俺の推測なのだが」
阿「あァ、なんだよ」
猩「最近Aは、」
猩「鏡を見ている時間が多くなったと思うだ」
阿「…つまり?」
猩「ばッ、俺の口から言わせるのか!!!」
猩「察しろ!!!薄情な奴だなァ!!!」
阿「面倒くせェ奴だなァ。……だが、」
阿「俺も一つ気がついたことがある」
その言葉に、何故か猩覚は「言ってみろ」と耳を塞ぎながら上から目線は健在で、阿伏兎は呆れながらも自分の推測を話し出した。
阿「飯を食わねェ」
阿「触られたくねェ」
阿「頻繁に鏡を観る」
指を一本一本上げて、猩覚はその指を見ながらどんどん縮こまっていく。
阿「以上。この三点から俺が推測すると、」
阿「譲ちゃんはたぶん、―――」
猩「彼氏なんて認めねェェェ!!!」
阿「ダイエットだッ!!!」
阿「叫ぶなッエテ公がァッ!!!」
明け方。
石頭であるはずの猩覚の頭に、立派なこぶが出来たのだった。
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作者名:み子 | 作成日時:2017年7月13日 20時