202 ページ2
自分の部屋を目前としてAは突如かかとを返して元来た道を戻った
見てはいけないと思った
知らないほうが、何も考えずに済むと思った
自分が求められているかなんて知らなくていいのだ
父は入院いていると聞いた
それならば、自分が向かうべきはここではなかった
Aは病院へ向かう途中に、ヴァリアーの隊服を脱ぎ、深いフード付きのコートを手に入れた
病院内へ潜入するためだった
きっと正面から向かって行っても気づく人は数少ないだろうが、それでも念をいれた
なんだか誰にも知られたくなかった
こんなにも姿を変えてしまった自分を見られたくなかった
誰にも何も言われたくなかった
何も聞きたくなかった
病院へ着いたAはもう一度フードを深くかぶって院内へ踏み込んだ
病院の独特の匂いが鼻につき少し顔をしかめた
父はどこにいるのだろうか
前回もこの病院へ来た、駐車場から見上げた病室の窓も、
喧嘩して別れた病室の位置もはっきりと覚えていた
まず初めに前回と同じ病室へ向かってみる
その途中に見慣れた顔はなく、なんだかまるで、院内全体が空っぽのように感じられた
そんなはずはないのに、こんなにも回りに患者がいるというのに
前回入院した部屋をそっと覗き込んでみる
しかし、そこには誰もいなかった、病室はすっかり人の影を消して寒ささえ感じられた
父は一体どこにいるのだろうか
Aは気配を殺して、待ち合いの片隅のベンチへと腰かけた
ここは病院の入り口で最も多くの人が行き交う場所
父の護衛の人数も考えれば、キャバッローネの１人や２人通ってもおかしくはない
かなり危険な策だったが致し方がない
Aには人に尋ねることも、ましてや他人と顔を合わせることさえ危険でしかなかったのだから
似てない、似てない。と言われ続けてきた
しかし、この顔を似ていると言ってくれる人もいた
もう他界した母ではなく、
この街の頂点に立ち皆を守ってきた父に似ていると
この黒髪で勘付く人はいないだろう、しかし
目を合わせてしまえば、なんといわれるかわからない
Aはそっと待ち合いの片隅で待った
父を知っている人が通るのを
自分が知っている人が通るのを
息をも殺して待つ姿は精鋭と呼ばれる彼らそのものだった
彼女に気づくものなど誰一人としていないのだった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あいちか(プロフ) - 玲雪さん» はじめまして、いつもこの作品を読んでいただいてるということでありがとうございます、玲雪さんのようなコメントを頂けることはとても励みになりますので、これからもよろしくお願いします。 (2016年10月30日 10時) (
レス) id: 4b1aefde64 (このIDを非表示/違反報告)
あいちか(プロフ) - アキラさん» いつもコメントありがとうございます、やはり定職についてからの定期的な更新は難しくなっていますがやめる気は到底ないのでこれからもよろしくお願いします。 (2016年10月30日 10時) (レス) id: 4b1aefde64 (このIDを非表示/違反報告)
玲雪(プロフ) - はじめまして！いつも読ませていただいてます！この作品大好きです！更新頑張って下さい！！ (2016年10月18日 19時) (レス) id: 898d277df4 (このIDを非表示/違反報告)
アキラ(プロフ) - もうどんどん話が更新されて続きの話が気になってワクワクしてます！！これからも更新頑張ってください (2016年10月12日 0時) (レス) id: d018642a1d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あいちか | 作成日時：2016年10月10日 22時
