stage20 ページ19
「白蘭サン…、大丈夫ですか？」
「あぁ…、正チャンかぁ」
すっかり夜が暮れ荒んだ景色を見渡せる窓辺で一人、白蘭は時間の流れに更けていた
教育の行き届いた丁寧なドアのノック音がどこか遠くで聞こえた気がして、そのあとに声を掛けられようやく執務室に入江正一が入ってきていたことを理解する
彼はこちらを心配そうに伺っていたが、その内容は僕の体調とかそういうことじゃなくて先ほどの出来事に関してなんだろう
「さっきのコト？」
「…はい、あんなに白蘭サンが取り乱すのも珍しいから…」
「そうだよねぇ…」
その言葉と共に、白蘭の脳裏には先ほどの光景が甦る
別に彼女はヒーローや勇者を気取っていたわけではなかった、僕だって世界の
だけど、無性に彼女の態度に腹が立った
この世界も、他の
彼女は何もかもお見通しだとでも言うような顔をして、
まるで今までが、そこまでが、今日までの出来事全てが、
まるで自分の支配下にあるような表情をしていた
だから僕は無性に腹が立って、とりあえず彼女を持っていた銃で殴っていた
すぐに謝ってくれれば、それで全部許してあげようと思っていたのに、床に手を付き殴られた痛みに耐えゆっくりと起き上がり、何も言わずに振り返ったその顔は―
なんとも不敵な笑みを浮かべていた
そんな表情、初めて見たし、
殴られた衝撃で腫れた頬も、その威力で切れてしまった口の端から滲む血も、
僕を憐れむように、あざ笑うようにこちらを睨むその瞳も、
何もかもが、君のためだけに用意されたものに見えた
君が主役になるためにこの
それが許せなくて、苛立たしくて、悔しくて、
僕は僕が主役なんだと言わんばかりに彼女の目の前で暴れ、手にしていた銃を彼女に向け引き金に指をかけていた所で騒ぎを聞きつけた正チャンや部下たちが慌てて駆け込んできたため、彼女は無事だ、今は収容所に戻っている
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作者名：あいちか | 作成日時：2020年9月12日 21時
