其の参 帰宅 ページ4
家に着くと、早速三郎がリビングにノートパソコンを持ち込み、武装探偵社について検索をかけていた。スマートフォンでも調べていたが、物足りなかったのだろう。
『武装探偵社』
軍や警察に頼れないような危険な依頼を専門にする探偵集団
昼の世界と夜の世界、その
なんでも「武装探偵社」の社員は多くが異能の力を持つ「能力者」だと云う。
では昼間の彼も「能力者」なのだろうかと、三郎の朗読をぼんやりと聞きながら、一郎は青年の姿を思い出す。
『異能力』
聞き馴染みのないどころか、現実にあるのかどうかすら疑わしいものが、さも当然のように記載されているのを見て、思わず笑いそうになる。
異能力など、まるで夢物語のようだ。話を聞いてくれた青年が居なければ、この探偵社の事など都市伝説だと笑い飛ばしていただろう。
三郎がパソコンで調べ直したのも、恐らくこれと似たような説明を見て、誰かの妄言だと思ったからであろう。
何はともあれ、少なくとも、人探しを頼める様な一端の探偵社とはまるで違う。どこか心の隅で彼等に依頼を、と思っていたが、とても頼めそうにない。
一郎は溜息を吐いた。
ヨコハマに伝手がないわけではない。ここまできても頼らないのは、一郎と、かつて彼が慕った男──碧棺左馬刻との間にある並々ならぬ因縁、もとい、借りを作りたくないという意地だった。
だが、ここまで来てしまうと頼ると云う手も考慮しなければならない。どうにも気に食わないが、仕方のない事だ。
(とりあえず、明日になってから考えるか)
幸いにも、明日は休日。一郎の営む「萬屋ヤマダ」も休業している。
勿論、ヨコハマに足を運ぶつもりだ。
二郎はヨコハマの知り合いにメールを送っていた。何人かいるらしい。我が弟ながら大した顔の広さだと感服する。
三郎はもう少しヨコハマについて詳しく調べるようだ。先程の説明欄にあった「異能の力」が、どうも気になったらしい。
他人よりも抜きん出た頭脳を持ち、歳の割に達観している奴だ。
迷信の類はくだらないと一蹴し、信じるタチではないと思っていたが、存外年齢相応の好奇心は持ち合わせているらしい。
或いは、徹底的に調べ上げ、やはり嘘だったと証明するためか。
どちらにせよその光景は一郎にとって微笑ましいものであった。
兎にも角にも明日は早い。夜遅くまで続けるんじゃないぞと声を掛け、一郎は夕食の準備に取り掛かった。
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作者名:耐熱ガラス | 作成日時:2020年3月15日 17時