花笑みのきみ (ページ40)

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35　覚悟しやがれページ40

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(･･駕籠が３丁？)

超えには出さねど
松本の疑問は表情に現れていたのだろう。

すぐに二宮が

「私らが乗る分と、もう一つは、お前が乗るんだよ。」

松本を睨みつけながら言い切った。

「えっ？！な、なんで私がっ？！」

うろたえる松本に

「ああっ？！」

と二宮が眉根を寄せて凄んで見せる。

「なんでって、お前
今さっきこの子に何をしてた？
ああ？
言い逃れようったってそうはさせないぜ！
この子に指一本でも触れる奴ぁ
誰だろうと許しゃしねえってな
こちとら、とっくに腹ぁくくってるんだよ！」

冷たい響きの声のまま
よどみなく言い切る二宮。

「‥人にはな、誰にも言えないような秘密が一つや二つある。
それを
お前は勝手に暴こうとした･･。」

二宮の言わんとすることは
この子の体の秘密のこと･･。

その秘密に
松本は勝手に土足で踏み込んだも同然なのだから
松本には二宮に返す言葉がない。

「‥こうなったら、お前にも協力してもらう。」

「きょ、協力？」

二宮の言葉に松本が顔を上げて疑問で返すと

「‥まぁ、元々
お前もまったく関係ない訳じゃあない。」

そう呟きながら
二宮がとび色の瞳をすうっと細めた。

「‥私が？どういうこと？」

二宮の言うことがさっぱり分からずに
綺麗に整えられた眉をひそめる松本だったが
二宮は
それ以上詳しいことは何も言わない。

二宮は

ただ一言

「‥･･覚悟しやがれ。」

と
小柄を松本の喉元に突き付けたまま
静かに呟いた。

その時の
二宮の整った美しい顔が
松本には

鬼に見えた･･。

松本が二宮の前で
蛇に睨まれた蛙のようにすくみ上がっていると
二宮の腕の中の少女・みやびの意識が
ふっと戻った。

そして
長いまつげを震わせて
ゆっくり、ゆっくり目を開けると

「‥せん、･･せ‥ぇ‥ 」

鼻にかかった少しかすれた声が
みやびの赤い唇からこぼれる。

「みやび、大丈夫か？」

二宮は
腕の中のみやびの顔をのぞき込んだが
顔色は真っ青で
いかにもしんどそう。

そんなみやびが
大きな瞳を涙で潤ませて

「‥ごめんな、･･さい。
せっかく、の･･お出かけ･･、だった･･のに･･」

途切れとぎれに詫びる姿のいじらしさに
二宮は
胸の奥がきゅっと詰まってしまう。

「いや、お前の様子に気づかなかった私が悪い。
すまない、みやび。」

そう言いながら
二宮は
みやびの頬にポロリとこぼれた涙の粒を
指の腹でそっと拭ってやった。