花笑みのきみ (ページ37)

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32　反撃開始ページ37

それでも
目を細め薄暗がりを透かしてみるうちに
室内の暗さに目がなじみ
ギューッと焦点が合ってきた。

その途端
二宮の目に飛び込んできたのは
ぼや･･っと発光するように白いもの････。

二宮はハッと息をのんだ。

あれは
あの白いものは

着物の裾が大きくまくられて
太ももまであらわになっている･･少女の脚！

そして

その上に
一人の男が覆い被さるようにして
白い太ももの間に手を差し入れているではないか！

二宮の視界がぐらりと揺れて
バシャッと鮮血をぶちまけられたように
目の前が真っ赤に染まった！

突然飛び込んできた二宮に驚いたその男は
パッと顔を上げるなり
「あっ！」
と叫んだ。

そして
すぐに少女の脚の間から手をサッと引き抜き
何もしてないとアピールするように
両手を高く上げた。

しかし
そんなアピールは
怒りで目がくらんでいる二宮には通じない。

もし二宮が武士だったなら
直ちに腰の大刀を電光石火の速さでふるって
目の前の男を一刀両断にしていただろう。

だが
二宮は武士ではなくただの物書き。
腰には脇差の一本もさしてはいない。

そんな二宮が
すばやく懐に手を入れてサッと取り出したのは

短刀！

･･ではなく、一本の筆だった。

二宮は
作家という職業柄もあって
常に紙と筆を携帯しているのだが
今、取り出したその筆はただの筆ではない。

これは
二宮仕様に特別にあつらえた護身用の仕込み筆だ。

二宮が
その筆をビュッと鋭く一振りすると
軸の真ん中辺りから筆先までがすっぽり取れて
中から
ギラリと光る小柄(小刀)が出てきた。

その小柄をクルッと回して持ち直すと
二宮は無言で
少女の上に覆い被さるようにしゃがみ込んでいる男に斬りかかっていった。

それは
一陣のつむじ風のような素早さ。

二宮は
土足のまま
土間から座敷に飛び上がり

びゅっ！
と、小柄を男の脳天目がけて鋭く振り下ろした。

ギラ･･ッ！

まるで稲妻のように小柄の刃が銀色に光り
男の額を
まさに斬り割ろうとしたその瞬間！

その銀色の小柄を
男が
真剣白刃取りよろしく
両手でビシッと受け止めた。

それが
二宮にはまた気にくわない！

「チッ！」

二宮は小さく舌打ちをした。

しかし
振り下ろした小柄を
両手でしっかり掴んでいるせいで
男の動きは封じられている。
この隙を二宮が見逃すはずがない！