花笑みのきみ (ページ23)

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18　胡蝶の舞ページ23

みやびが首をのばし
群がる人々の頭の間から若者を覗き見ていると

若者があおぐ白扇の後ろから
白い蝶々が
ヒラヒラ、ヒラヒラ‥

と
舞い出てきた。

「あ･･、蝶々。」

みやびが
小さく呟くと
二宮が

「よく見てごらん、あれは白い紙の蝶々だよ。」

と
みやびの耳元で囁いた。

「えっ？」

みやびが
二宮を振り返り大きな瞳をパチパチとまばたいた。

「紙？だって、と、飛んでる‥。」

みやびがそう言い終わる前に
若者があおぐ白扇の後ろから
また
別の白い蝶々が

ヒラヒラ、ヒラヒラ‥

次々に飛び出してきた。

若者がゆっくりとあおぐ扇の動きに合わせて
白い蝶々たちが
仲睦まじく
付かず離れず舞い踊っている。

その数は
ざっと数えただけで十はこえている。

若者の周りを
紙でできた白い蝶々たちが
ヒラヒラと舞っているその様子は
夢のよう‥。

「‥きれぇ･･。」

大きな瞳をキラキラさせて
うっとりと見とれているみやびを
二宮は満足そうに見つめた。

でも
まだまだ
みやびに見せたいものはいっぱいある。

「みやび、あっちにも面白いモノがあるよ。」

二宮がつないだ手をきゅっと強く握ると
ハッと夢から覚めたように
みやびは
目をぱちぱちさせた。

「ほら、あっちでは水仕掛けをやってるよ。」

二宮が指さす方を目で追うと
若衆髷を結った裃姿の若い娘が手にした扇子の先から
細い細い水が
放物線を描いて勢いよく飛び出しているではないか。

笛や太鼓のにぎやかな囃子に合わせて
若衆髷の娘が
水の噴き出ている扇子を
ふわり、ふわり･･と翻すと

今度は
足元に置いてある花瓶から
綺麗なギヤマンのグラスから
太く細く、長く短く、次々と水が噴き出してきた。

たちまち上がる大きな歓声。

その歓声が静まる前に
いきなり
若衆髷の娘の後ろに張り巡らされていた黒幕が
バサッと切り落とされた。
その黒幕の影から
大きな花束を抱えた天女姿の美しい女が四、五人
スルスルと滑るように現れ
若衆髷の娘を中心に綺麗に扇形に並んだ。

すると
天女姿の女たちが持っている大輪の牡丹の花束から
一斉に水が
天を突くほど高く高く噴き出した。

それだけではない。
舞台の前後左右から
数百本の水しぶきが入り乱れて噴出し
同時に
五色の花火が火炎をあげた。

「きゃっ！」

みやびが
可愛く小さな悲鳴を上げると
二宮は
ふふ･･っと笑い

「大丈夫だよ。」

みやびの華奢な肩をしっかりと抱きかかえた。