花笑みのきみ (ページ22)

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17　浅草寺ページ22

雷門でおなじみの浅草寺は
今も
東京名所としてたくさんの観光客でにぎわっていますが
遠い昔のお江戸でも
大変な賑わいだったそうですよ～。

特に
浅草寺本堂の北西一帯は「奥山」と呼ばれて
江戸ッ子たちの娯楽の場でした。

奥山には
参拝者が休息する茶屋が何軒も並び
芝居、見世物、独楽回し、猿芝居、居合
軽業、手妻(奇術)などなどの大道芸人が
人びとを楽しませてました。

また
茶屋で働く看板娘は
当時のアイドルみたいな存在で
一目見たい会いたい
その一心で
通ってくる常連さんも大勢いたとか‥。

そんな茶屋の看板娘といえば
人気絵師・鈴木春信が描いた笠森お仙なんぞが有名でしたね。

上野の笠森稲荷の茶屋で働いていたお仙は
そりゃあもー、大人気で
お仙ちゃんを一目みたい！と熱望する野郎たちが
連日茶屋にわんさとおしかけて来て
『ヨダレを垂らして見とれるばかりで団子も食べない』
という状態だったらしいっすよ～♪

･･てなことは、どーでもよくて

話を戻しましょう！

・

さてさて

二宮とみやびが連れだってやってきた浅草寺。

ここは
いつも参拝客でいっぱいだが
今日はいつも以上に
びっくりするぐらいの大賑わい。

めったに外出しないみやびなんぞは
切れることない人の波とその熱気にあてられて
駕籠から降りるなり
すくみ上がってしまった。

お口をポカンとひし形に開けて
瞳をぱっちり見開いたまま
あっちをキョロキョロ
こっちをキョロキョロ。

そのびっくり顔がなんとも言えず可愛くて
思わず二宮は
ふふ･･って笑ってしまう。

「ほら、みやび、あっちで胡蝶の舞をやってるよ。見に行こう」

二宮がみやびに向かって手を差し出すと
みやびは
その手にそっと自分の手を重ね
おっかなびっくり一歩踏み出した。

「こ、胡蝶って･･、蝶々のこと？」

二宮の手をしっかりと握り
ぴったり二宮にくっついて歩くみやびが
ちょこんと小首をかしげて尋ねてくる。

「そうだよ。ほら、あそこ見てごらん。」

二宮が
ちょっと離れた所の黒山の人だかりを指さした。

そこには
薄い水色の小袖に若草色の裃を身に着けた若者が
緋色の毛氈の上に
シャンと背筋をのばしてきちんと座し
にこやかに微笑みながら
白い扇を優雅にあおいでいる。