とある工業高校のおはなし ６（業務連絡♪）

30　なんという‥ ページ30

ギリギリと
奥歯が軋む音がする。

握りしめた拳が
ブルブルと震えている。

こんなに感情を爆発させないように
必死で堪えてる俺の我慢が
このおっさんには
伝わらなかったようだ。




さらなる暴言を
俺に向かって吐きやがった！

「ははっ、おかしくないですよ。
世間の人がみんな知ってることです。
この学校の偏差値が、はっきりと物語ってるでしょう？
ここは
コツコツ地道に努力するという
学生として
ごく当たり前の基本的な事ができない
そんな子たちが来る学校なんだってことを。」





ブチッ！！！





俺の中で我慢の命綱が
めっちゃおおきな音を立ててぶち切れた！





「黙れーーっ！！」


思わず腕を振り上げそうになった俺‥。



その俺の体を

「長瀬先生っ！」

「長瀬っ！」

小笠先生と大野が慌てて抱きとめた。





「んがーーっ！」

鼻息が荒くなってる俺に向かって
櫻井のおっさんは
嘲るようにこう言った。


「ふん
ここでは
生徒だけでなく
教員も言葉につまったらすぐ暴力ですか。
所詮
この程度なんですよ。
こんな環境の中
いくら翔の成績が優秀だって言われても
たかが知れてますね。」

長瀬「ちっ、違う！」

小笠「櫻井くんは、本当に‥っ！」




俺も小笠先生も
びっくりしすぎて
言葉が出ない！


このおっさん
櫻井が
JSEC(ジェイセック＝Japan Science ＆ Engineering Challenge)で
最優秀の文部科学大臣賞を
受賞したってこと知らないのか？
新聞にも載ったのに！


このJSEC入賞っていう実績は
東京大学の推薦入試要件にも入ってるぐらい
すっごいことなんだぞ！

だから櫻井は
東大のＡＯ入試にチャレンジしたら
もしかすっと
合格しちゃうかもしんないんだぞ！
そんぐらい
すっごいことなんだから！

このおっさん
櫻井が
本当にどれだけ優秀な奴なのか
全っ然、分かってないっ！


頭っから
工業高校のことを見下している。





「栄高からＭＩＴに留学するっていうんなら
エリートとしてハクがつくけど
こんな田舎の工業高校からＭＩＴってのは
なんか
文科省も
物見遊山につれてってやるわって感じじゃないんすか？」





‥‥なんという暴言。





‥なんという偏見。





これが
学歴差別なのか‥。


いまだに
まだこんな事を平気でいう人がいるんだ‥
という事実に

俺も

小笠先生も

大野も

そして
ここに集まってきていたうちの先生方も

しばし
呆然としてしまった。

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