とある工業高校のおはなし ６（業務連絡♪）

15　キャラメル ページ15

大野さんにケツを蹴られて

(転ぶッ！)って思った時


相葉くんの細い腕が
俺に向かって真っ直ぐに伸びてきた。




そして
ぎゅうっと俺の体を抱きしめてくれた。





突然のことで‥

すぐには
何が起きたのか理解できなくて‥

石のように固まってしまった俺。





その時‥


すごくいいニオイが
ふわりと、俺の鼻腔をくすぐった。









なんだろ、これ‥。


このニオイ‥


もしかして
相葉くんの、ニオイ？


‥ 甘い、 ‥キャラメルみたいな
相葉くんの、ニオイ‥。









「 ‥うめ、 ‥ちゃ‥ぁん」


３年生たちが
たまらなく可愛いと言ってたあの声が
俺の名前を呼んでいる‥。





「怖かった‥、 怖かったよぉっ‥。」





涙声‥。

声が、ふるえている。
相葉くん、泣いているんだ。





シャツ越しに
相葉くんの涙が
俺の肩に、じわっと滲んでくるのが分かる。


肩が、 ‥熱い。





相葉くんの柔らかな腕に抱かれた俺は
四つん這いのまま
身動きとれなくなっていた。





どうしよう‥
このままってのは、まずいよなっていう気持ちと
もうちょっと
この甘やかな相葉くんの香りに
包まれててもいっかなっていう二つの気持ちの間で葛藤していたら



「雅紀
梅ちゃん、はなしてあげな。」


松本くんが
相葉くんの肩に手をかけて
そ‥っと
俺から引き離した。





「///‥あっ！ ご、め‥///」

松本くんに言われて
すぐに
相葉くんはパッと身を起こした。



真っ赤な顔に
涙をいっぱいにためた大きな瞳が
俺を見つめている。

けれどその瞳は
すぐに
伏せられ、きつく閉じられた。




急に身を起こしたので
めまいを起こしたのだろう。


相葉くんの細い上半身が
ゆらり‥と揺れて


あ、倒れる！
って思ったら
松本くんが肩を支えて揺れる体を抱きとめた。





Ｍ「横になっときな。」

という松本くんに
相葉くんは目をつぶったまま

ううん‥と首をふって
ゆっくりと、ベンチの背もたれにもたれた。



そんな相葉くんの足元に跪いている俺の姿は
すごく、滑稽だったと思う。



だから
大野さんもこう言わずには
いられなかったのだろう。





「この、おっさん顔の奴、誰？」

って‥。

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