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13 策士 ページ13







俺は
雅紀を抱いたまま
よいしょっと立ち上がった。



雅紀の細い腕が
ぷらんと揺れる‥。




「 ‥ ん ‥」

雅紀が小さく鼻を鳴らして
俺の胸に
顔をすり寄せてきた。

もう目を覚ましそうだ。





「けどさ‥
長瀬が
あんなに落ち込むとは、な。」

大野さんがそう言って
先に立って
駅の方に歩き出した。





うん‥、それは俺も同感だ。









長瀬先生は
自分を責めていた。




雅紀に
無理難題ばっか押しつけてたって
両手で顔をおおって
言ってたっけ‥


「‥何もなかったから良かったものの
もし
相葉が
今朝、大野を迎えに行く途中で
しんどくなってたらって考えると
俺‥
もう、ゾッとする‥。」

って‥。





そうつぶやく長瀬先生の背中を
吉永先生が
よしよしと撫でてあげながら

「もうそんなに自分を責めちゃいけません。
それよりも
大野君のお迎えは
もうやめさせた方がいいかも‥。
いろいろと大変だろうから。」

って言ってた。



















「 ‥ 明日から
俺、自分で起きるわ‥。
相葉ちゃんに無理させられないもんな。」

大野さんが
頭をポリポリとかきながら言う。



そんな大野さんを見ながら
俺は

もしかしたら
吉永先生は
大野さんにそう言わせるために
大野さんを
保健室から追い出さなかったのかな‥って
ぼんやり考えていた。





そうだとしたら
吉永先生って深慮遠謀って言うか
けっこうな策士だよな。









駅舎の中に入ると
梅ちゃんが先回りして
ベンチに乗っかってた
自分と雅紀のカバンをサッとのけ
雅紀が横になるスペースを作ってくれた。



このベンチ
うちのガッコの建築科が
実習でつくった木製ベンチだ。

そこに
雅紀の丸みのある小さな頭を
両手で支え
静かに寝かせた‥。



できるだけ
そっと、そっと
ベンチに寝かせたつもりなんだけど
それまで
雅紀の体をしっかりと抱えていた俺の腕が離れた途端
不安になったのか
雅紀が

「い ‥ や‥っ 」


小さく首を振って
すぐに
俺のシャツをつかんで
しがみついてきた。
「おっと‥っと。」


雅紀に
急にしがみつかれた俺は
バランスをちょっと崩したけど
とっさにベンチと背もたれに手をついて
なんとか
雅紀の上に倒れ込むのを耐えた。



「 ‥ じゅ ‥ ん、くん ‥ 」


雅紀が
俺の名を呼びながら
ゆっくりと目を開け俺を見上げる‥。





「 い‥ や 、ケンカ‥、いや ‥ぁ 」



涙で潤んだ瞳が
俺をまっすぐに見上げている。

14 泣きじゃくる‥→←12 願い



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はっしー(プロフ) - るなさん» るなちゃん、遊びに来てくれてありがとう!この章もここでひとまず終わりです。読んでくれて本当にありがとう!この章の最後に可愛いまちゃきが書けて、嬉しかった私。はぁ〜、まちゃきが好きだわ〜。ふふ、新章にも遊びに来てね♪ (2015年8月14日 0時) (レス) id: 1d879c733a (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - はっしーさん、私まで楽しくなるぅ~!先生方もカッコ良くて、ホントに素敵な工業高校だー!うぉー!そして潤くんに守られて登校する雅紀の可愛いこと!鈴木さんじゃなくても鼻血です! (2015年8月13日 6時) (レス) id: f510cb6ad4 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - はぴともさん» はぴともさん!私、くノ一と化してました!ササッと闇から闇へと走り抜けちゃうの♪夏休みの間はこんな更新が増えそうよン♪池乃校長、やっぱいい人だったみたい♪んふふ、続きをお楽しみに! (2015年8月13日 0時) (レス) id: 1d879c733a (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けっめちゃーん♪めだか‥じゃなくって池乃校長、いい人でしょう?笑 もうねぇ、私大好きなの♪それはさておき‥。大ちゃん、ひらりと何でも乗り越えそう。そんな大ちゃんが私は好き♪ (2015年8月13日 0時) (レス) id: 1d879c733a (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - sa2さん» 夏休み、子どもが家にいるくらいならどーにかなるんだけど、旦那が家にいるとマジで何も書けない‥。だからこうして夜中にPCに向かう私。でも書くの楽しい!んでもって読んで下さる方がいて、本当に嬉しい!sa2さんありがとう! (2015年8月13日 0時) (レス) id: 1d879c733a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はっしー | 作成日時:2015年5月25日 0時

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