626 並んだふたり ページ5
純友に
バッサリ斬り落とされた智の手首が
甲板に転がる‥。
智は
左手で傷口を押さえたが
その指の間から
赤い花びらが甲板に落ちた。
うめき声一つあげない智が
無表情のまま
純友の顔を見つめる。
「‥てめえ、手加減したな？」
純友が憎々しげに、うめいた。
「いつものお前なら
俺なんぞにやられるはずはねえ。
‥くっそぉ、 なめやがってっ！」
悔しげな純友に
智は
口の端を歪めて
「笑い」の表情をつくった。
「ドウシタ？
純友ヨ‥
ビビラズニ、ココヲ ‥、狙エヨ‥。」
智は
自分の首筋を
手刀でなで斬るフリをして見せた。
「うぬ‥っ！」
逆上した純友が
斬馬刀を再び振りかぶる。
無くした右手の先から
赤い花びらをこぼしながら
智は
残された左手を純友に向けた。
きゅるる‥
手のひらから短刀が飛び出してきて
智は
その短刀をくるりと手のひらの中で回し
斬馬刀を受けるように身構えた。
しかし
その構えからは
殺気も何も感じられない。
その姿を見て
潤雅は、気がついた。
( ‥あやかしは、
わざと、斬られようとしている‥‥？ )
直感的にそう感じた。
あやかしにとって
かけがえのない存在であるうつほは
もういない。
うつほのいない世界で
これから先
永遠に生き続けなければならない‥という事実は
あやかしにとって
耐え難いものなのだろう。
うつほがいないなら
死んでしまいたい。
純友が
殺してくれるなら
それは
あやかしにとって思っても見なかったこと。
(あやかしは
怒りに狂う純友の刃で
この不死の日々を終わらせるつもりなのだ‥。)
潤雅は
左足を引いて
くるっと体を反転させるや
城島に寄り添われて横たわる雅紀の隣に
智から託されたうつほを下ろした。
頭をくっつけるようにして
横たわる二人‥。
その表情は
眠るように穏やかだった。
涙が滲んでいるまなじりも
長い睫毛も
スッと通った鼻筋も
薄く開いた形のいい唇も
全部
まったく同じ‥。
まるで
鏡に映り合っているようにそっくりな二人の顔は
人形のようにきれいで
今にも
瞳をパチッと開けそう。
そんな二人を見るだけで
潤雅の胸がつまる‥。
しかし
潤雅は感傷的な思いを振り切って
立ち上がるや
対峙する智と純友の方に向き直った。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
