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今度は
うつほが
唇をかみしめて
視線を下に落とした。
「父さまって
呼んだこと‥ないんじゃない？」
雅紀が
うつほの顔をのぞきこむ。
「‥ない、よ。」
うつほは
ちらっと上目づかいで雅紀を見た。
その目には
じわり‥と涙が滲んでいた。
「‥呼びたいよ。
俺だって
『父さま』って呼びたい。
でも‥、‥‥どうしても、呼べないの。」
雅紀の手を握ったまま
うつほがつぶやく。
「都にいた時
何度も
呼ぼうとしたの。
でも‥
呼ぼうとしたら
思い出しちゃうんだ。
俺のことを
『ばけもの』って言ったあの人の声を‥
俺を本気で斬ろうとしたあの人の目を‥。」
「そ、それは‥っ！」
雅紀が反論しようとするが
うつほがそれを遮った。
「分かってる！
俺たちが双子だって知らなかったんだから
仕方がないって
分かってる！」
思わず大きな声になったうつほを
手を握り合ったまま
目を大きく見ひらいて雅紀は見つめた。
ハッとなって
雅紀の瞳を見返すうつほだったが
すぐにまたうなだれて
「でも‥‥
頭では‥、分かってても
気持ちが‥。」
とうとう涙をこぼしてしまった。
「‥あの人は
俺のことを
今も‥
ばけものと思ってるかも‥。」
うつほのつぶやきに
雅紀が
「そんなことないっ！」
ブンブンと勢いよく首をふった。
「俺のことなんか
息子だって
思ってないのかも‥っ」
「うつほっ！！」
うつほが
言い終わる前に
雅紀がうつほをぎゅうっと抱きしめた。
「そんなことないっ！」
うつほの頭を
自分の胸に抱きかかえた雅紀は
涙をこぼしながら叫んだ。
「そんなこと、絶対にないからっ！！」
雅紀の細い首筋に顔をうずめるうつほ‥。
「あの戦いが終わった時
父さまは
僕らを抱きしめてくれたじゃないか！」
涙をこぼしながら
うつほの身体を思いっきり抱きしめる雅紀‥。
「あの時
『おかえり』って
父さま、言ったじゃないか！」
雅紀の背中に
うつほの細い手がまわる‥。
「父さまは
うつほが『父さま』って呼んでくれるのを
待ってるよ！」
「‥ん」
雅紀の背中を
ぎゅううっと抱きしめるうつほの声は
涙が滲んでふるえていた。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
