646 潤雅(2) ページ26
オト丸は
自分の耳に手をあてて
じっと遠くの船を見つめていたが
「‥皆、かなり興奮し、喚き散らしてます。
ああ、もうすぐ射ってきそう。
船縁に並べって言ってます。」
と
報告した。
すぐにスバルからも
「船倉に矢もたっぷり積んでいます。」
続けて報告が入った。
「ええ〜、それ厄介やな〜。」
ヤスが肩をすくめながら
唇をとがらせた。
「俺、潜ってって
海の中からなんか仕掛けてきましょうか？」
リョウがうずうずしながらそう提案したが
潤雅は
「ここは、我らの方から迎え撃ってやろう。
マル、この船をあいつらに近づけてくれ。」
マルをふり返ってそう命じた。
「よっしゃ！ お任せあれ！」
すぐにマルは
自分の両手にぺっぺっと唾をつけて
船尾の櫓をしっかりと握った。
「蝉丸、お前は
あの船に向かって思いっきり叫んでくれるか？」
潤雅が
オト丸の横でしゃがんでいる蝉丸に言うと
「はいっ！」
蝉丸は嬉しそうにニッコリ笑った。
「よぉ〜し、皆
耳ふさいどけよ〜！」
ヨコが嬉しそうに笑って
自分の耳をしっかりと押さえた。
「おりゃ〜っ！」
マルが嬉々とした表情で
櫓を海の中に突っ込んで高速回転で漕ぎだした。
水飛沫が大きく跳ね上がり
追捕使本船は
ものすごい速さで
敵の船に直進していく。
その加速のすごさは
甲板に立っていた
衛都たちが
仰向けにすっ転んでしまうほどだった。
ザザザーーーッ！
水飛沫を上げて進んでいく追捕使本船。
「あはははっ！
こっちの速さに、あいつら慌ててますぜ！」
スバルが
物見櫓から叫んだその時
「蝉丸、今だっ！」
潤雅が短く命じた。
蝉丸が
胸一杯に息を吸い込んで
「わあああああーーーーーーっ！！！」
思いっきり叫んだ。
思いっきり叫ぶ蝉丸の声は
あらゆるものを震わせる一つの武器だ。
目に見えない矢のような蝉丸の声は
海面を一直線に波立たせ
敵方の船にぶち当たって船首をぐいっと上に向かせ
船全体を軋ませた。
そして
弓を構えていた者の鼓膜を
簡単に破ってしまった。
敵が悲鳴を上げて耳を押さえ
バタバタと倒れ伏しているうちに
追捕使本船は
敵方の船に横付けされた。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
