641 仁宇の長老 ページ21
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「あやかし‥、が
あやかしで‥、のうなった‥、か‥。」
仁宇の長老は
高台にある館の座敷にちんまりと座り
つぶやいた。
開け放たれた引き戸から
�兪�やかな松林が見え
その向こうに
青い海が広がっている。
長老は
見えない眼で
よせくる波と、かえす波を
じっと見つめていた。
「‥とうとう‥
ワシの方が
ば、化け物‥に、 なって‥、しもうた‥。」
ふぉっ、ふぉっと
尖った肩を揺らして、長老が笑った。
「まあ、しかし‥
た、滝沢よ‥
長生きも‥、し‥、て、みるもんじゃ‥、の。」
口をもごもごさせながら
長老が
一人つぶやく。
側仕えの青年・滝沢は
長老の言葉がはっきりと聞き取れなかったが
特に、聞き直したりはしない。
長老の曲がった背中越しに
遠くの白波を静かに眺めている。
「あ‥やかし、が‥
人間に‥、な、なる‥のも、そうじゃ‥が
軍船‥の、‥せ、先頭で
か‥、輝く、黒髪を‥なびかせる、姫‥君が
皆を、し‥たがえる姿が
み、見られ‥る、とは、お、思いも‥、よらなんだ‥わ。」
ふぉ、ふぉ‥
再び笑う長老に
滝沢は澄ましてこう切り返した。
「あの姫君は男装してたので
黒髪はなびいておりませんでしたよ。」
それに
むう‥っと
長老はうなり声を上げた。
「ワシの、こ、心‥の、目には‥
み、見えたん、じゃっ！」
ムキになって言い返す長老に
滝沢は、くすっと笑った。
長老も、つられて
顔中をシワだらけにしながら
くしゃっと笑った。
「‥あ、あの姫君が‥
まさか‥、ちゅ、中宮様に‥、なる‥とは‥、な。」
「ふふふ‥、本当ですね。」
長老が見えない目で
後ろに控えた滝沢をふり返った。
「み、‥帝も
良き、ひ、姫君を‥、もらいなされた‥。」
歯のない口を開けて
長老が
ふぉふぉっと笑う。
「‥ワシには
み、見える‥。
あの、姫君の‥、橙色の、ま、眩しい‥光が
すべて‥、を、照らして‥、いくのが、な‥。」
明子の橙色の眩しい光‥
その光が
櫻井帝をあたたかく包み込み
そして
櫻井帝の持つ本来の輝きを引き出していくだろう‥。
それが
長老の黄色く濁った盲目の眼には
はっきりと見える。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
