638 戦いすんで‥ ページ18
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戦いは、終わった‥。
潤雅の指令の下
水主たちが櫂を握り
追捕使本船は
今
仁宇の浜を目指して波を切っていた。
衛都たちが
海水をくみ上げて甲板に撒き
血を洗い流していく。
さっきまでの緊迫感は
すっかり消え去っていた。
死闘を繰り広げた
純友と斗真の父子の遺体は
船倉に並んで寝かされている。
衛都たちと城島が
遺体の汚れをきれいに拭き取った後
白い麻布で
二人の遺体をきれいにくるんだ。
その様子をじっと見ていた潤雅は
都まで移送し
しかるべく
十密寺で手厚く荼毘に付そうと
密かに決心していた。
そんなことを
真っ暗な海を見ながら考えていた潤雅の側に
城島は
手を拭きながら寄ってきて
「‥昔、漁師から聞いたことがあるんじゃが‥」
低い声で話し始めた。
「西国の海の
どこかに
死んだ者の亡霊がいっぱい集まる
吹き溜まりがあるそうな‥。
その側を通りかかった船は
亡霊たちによってたかって沈められてしまうんだと。
船に乗っている者は海に放り出され
無数の怨霊たちに取り憑かれて
自分が人間であることを忘れ果て
『あやかし』という化け物になるんだ、という話‥。」
長いこと忘れていたが
確か
そういう話だったと思う‥
と
城島がつぶやく。
「そうか‥
あやかしは、元は人間だったのか‥。」
眉根を寄せて難しい顔になる潤雅に
城島が答える。
「そういうことじゃ。」
どうしても、うつほから離れようとしない智を
城島は顎でしゃくった。
「あやかしは
純友に斬って斬られて
怨霊たちは消滅してしもうたのかもな‥。」
城島の言葉に
潤雅は
真面目な顔でうなずき返した。
なんにせよ
目の前であやかしが消えて
あの小さな男の子が現れたのは事実なのだから
もう
それを受け入れるしかない。
潤雅は
甲板の隅で
智を抱っこするうつほと
それに寄り添う雅紀の姿をじっと見つめていた。
その甲板の隅の方では
智を抱っこしたままのうつほと雅紀の周りに
異形の子どもたちが
群がっていた。
みんな智に興味津々で
智の髪をつんつく引っ張ったり
お尻を指先で突いたりしている。
その度に
小さな智は
ぷるぷる頭を振って
うつほの胸元にギュッとしがみついた。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
