崩される日常 (ページ44)

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42話ページ44

Ｓ side

雅紀と生田先生の過去。

雅紀の学生時代の事件でさえひどいものだったのに

これ以上何があるというのか。想像がつかない。

I 「俺と雅紀はお互いの実家が近所で

幼なじみなんだ。初めて会ったのは公園。

俺は友達と公園で遊んでた。

そいつが蹴ったボールが遠くに飛んでってさ、

拾いに行ったんだ。ボールは砂場にあった。

ボールを拾って戻ろうとした時気づいたんだ。

小さな男の子が1人で砂のお城を作ってた。

まぁ、その時は気にしてなかったけどね。

その後17時まで友達と遊んで、帰ろうとしたら

さっきの男の子の事が気になってきて

もうさすがにいないだろうなぁとは思いながも

砂場に行ってみれば男の子はまだ遊んでた。

思わず声かけたんだ。

『まだ帰らないの？1人？』って。

そしたらその男の子が、

『かえらない。おうちだれもいないもん。
どうせひとりぼっちだもん。』

そう言ったんだ。俺さ、それ聞いてもの凄く

可哀想になって、思わず

『じゃぁさ、俺んちでご飯食べない？』

気づいたらそう声かけてた。｣

Ｎ「その男の子がまーくん？」

I 「そう。俺が誘ったら雅紀ってば目キラキラ

させてさ、『行きたい！いいの！？』って

すんげー嬉しそうに言うんだよ。」

生田先生は懐かしむように優しい目をして語った。

I 「俺んちは母子家庭でさ、母親は美容師で

うちで店を開いてた。裕福なわけでは

無かったけど、結構幸せでそれがあたりまえ

だった。けどさ、雅紀は俺んちに着くなり

『おうちに、明かりがついてる...。』って

凄く不思議そうに言ったんだ。

家への中に入れば母親が『おかえり！』って

言ってくる。そうすれば雅紀はまた不思議

そうに『おかえりってなに？』って言うんだ。

雅紀の事情をその時何も知らない俺は

こいつなに言ってんだ？としか思わなかった。

戸惑ってる俺をよそに、母親は

『おかえりっていうのはね、お疲れ様や、

無事に帰って来て嬉しいって意味なのよ？

だから、そう言われたら、ただいまって

返すの。いい？』と優しく雅紀に言ってた。

雅紀は素直に『うん！おばちゃんただいま！』

って満面の笑顔でそう返してた。｣