好き以上、愛してる未満。 (ページ44)

今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:108,263 hit

38 ページ44

.

「...は、い」

『え、』

...え、あれ、私...。

.

『今、はいって言った！それって彼女になってもいいってこと？』

「...っ、あ、いや。...その」

分からない。
何故か口が勝手に動いていたのだから。

『俺、めっ...ちゃ嬉しいんだけど』

くしゃり、目の下に皺を作って浮かべた笑顔。

どうしよう。喜んじゃってる。

.

『...あ、俺とキスしたくないから、ってわけじゃないよね』

「そんな、！...ち、違うよ。ていうか、その、...」

『じゃ、遠慮なくー』

自分の気持ちをどう伝えようか
葛藤している最中、その声と共に近づいてきた雄登の整った顔。

え、え、ちょっと。
待ってよ。

そう心の中で叫んでも
当然待ってくれるはずもなく、
私はぎゅっと目を瞑った。

.

優しく触れただけで離れた唇。

何だか、甘くて、ふわふわしていて。

.

顔を遠ざけた雄登は私と目を合わせて

『A、目がめっちゃとろーんってなってる』

そう、笑った。

きゅって、胸の奥が締め付けられて。

でも苦しくないの、心地よいくらい。

なんで。どうしてだろう。

一度下に向けた視線を上に上げて
しっかりと雄登を見つめた。

.

『俺の事、...好きになった？』

何馬鹿な事言ってるの、
元から好きだよ。

前の私なら、きっとそう言ってたんだろうな。

.

雄登が瞬きをした。

それはスローモーションのように
ゆっくりに見えた。

.

"好き"には沢山の形があって、
この気持ちがはっきりとそうだとは
今、断言できないけれど。

「あのね、」

布団の中から手を伸ばして、
雄登の洋服の裾を引っ張って声を掛けた。

雄登は少し肩を震わせると、
私の方に体を前のめりにした。

「...好き、とかまだよく分からないけど」

『うん、』

「傍に、いたいって思うの。雄登と一緒にいると安心するの。...恥ずかしくて、胸が苦しくなって...でも、嫌じゃないの」

「私、雄登の傍にいたい。...駄目、かな？」

ゆっくりと、でもきちんと、
自分の言葉で伝えた。

.

『駄目じゃない、全然。...ていうか、それを"好き"って言うんだと思うけどな〜』

「え、そうなの！？」

『まぁ、いいや。Aはそのままでいてよ』

.