【歌い手】転入した先が狼だらけの男子高とか聞いてない

狼 が 四 匹 ページ4

手が伸びてきた方を向くとこれはまた顔の整った茶髪の男の人が居て。

その人の手に見えるのは私の卵焼き。

此奴が犯人か…


そう確信した私はその人を睨んで一言。


「すみません、人の食いもん勝手に取らないでください」


そう言うが、私の顔を見て静止した目の前此奴には効果なし。

暫く静止しているものだから、私もどうしていいかわからず硬直。

やっと我に帰ったようにした男に、自分も我に帰る。


「あぁ、ごめんごめん。女子って珍しいから…ていうか転入は初めてかな…？」

なんて、頬を掻きながら言った。


「親に騙されたんですよ。私はどちらかというと女子高が良かったし」

一応私にだって常識はある。

初めて会った人にタメ口なんて非常識人のすること。

目の前の人が非常識人じゃないって言いたいだけだけど。


「あ、そういえば。
私の卵焼き勝手に取らないで下さい」

思い出したようにそう言うと、笑われた。

「俺、ちょっと頂戴って言ったから勝手に取った訳ではないよ(笑)」


いやいやいやいや本人の承知なしには食べたら駄目でしょ！
普通！

私卵焼き好きなんだよ？！
ねえ？！


キャラ崩壊してるのは脳内の特権。

顔は多分、無表情だと思う。


「それでも本人の承知なしじゃ駄目じゃないですか？」

「はいはい、じゃあ慰謝料として…」


そう言われた瞬間目の前に来た男の顔。

そして小さくて耳を澄ませないと聞けないようなリップ音。

唇に何かが当たる感触。

後頭部に置かれた手。

そこで悟った。

あぁ、私此奴にキスされてるんだな、と。


顔が離れ、固まってる私を見て微笑んだ男の頬に、平手打ちを一発。


「何が慰謝料だよ！」


そう言ったが最後、広げていた弁当を片付けて屋上を後にした。


気持ち悪い、気持ち悪い。

何が慰謝料だよ。

キスは気持ち悪いから、本気で。

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