【ドラクエ11】英雄と私と恋情と

プロローグ ページ2

『シアン────我らが勇者よ
この命 今日から貴女に預けます』

そう私の前に跪いた英雄

『俺はお前の盾だ 世界に平和を取り戻す
その時まで お前の進む道は俺が守る』

そう私を真っ直ぐに見つめて静かに語った英雄

『お前は…まるで眩い温かな光の溢るる
太陽のようだ…だが､時には俺にでも頼れ
お前のそのような顔を見ていると どうも
調子が狂う』

そう揶揄いも含めながらも
鋭い双眸を緩やかに細め
私の頭に大きくて無骨な手を
不器用に乗せる英雄

『シアン……駄目だ…お前は今は我が主…
主に対しこのような心情を持つなど…許されぬ』

悲しげに目を伏せてそう私を諭す英雄

『シアン……お前が悪い』

切なげに熱い吐息を漏らし
何者をも射抜く双眸の奥に滾るような熱を
浮かべて 私の唇を親指で撫でる英雄

私は英雄に恋をした

1つの水滴が広い海の中に落ちて
その波紋が緩やかに広がって行く様な

それが私の初めての恋情

だけど私は“勇者”だから

行かなければならない 求めなければならない

過ぎ去りし時を… 私が犯した数々の罪…
失ったものを求めねば

それに漸く気づいて
私はまた深い罪を犯してしてしまった

この時にかげかえのない大切な人々を
残していかねばならない

唯一無二の相棒 姉を失った双賢の片割れ

何よりも朗らかで優しさに溢れた騎士の彼女

唯一血の繋がりを持った穏やかな祖父

強かで誇り高い姉のように慕った彼女

そして あの英雄

英雄に…貴方に恋情を抱いた私は罪深い

それでも私は求めます

過ぎ去りし時を────









どうか罪深い私を忘れて幸せになって…

次は…あちらの“時”では

必ず私が貴方を守るから





私のこの恋情は“この時”で最初で最後の
ものにしよう

私は何よりも罰を受けなければならないから

せめても 貴方の幸せを願わせて────









それでも彼らは 揺れ たゆたう

過ぎ去りし時では水のような恋情ではなく

何よりも燃え 灼きつき 焦がれるような

そんな────英雄と勇者の恋情



『……きっと俺はお前に一度でも魅せられれば
最後…その感情に炎を宿し そのまま惹かれ
またお前に惚れる だから────』



忘れてくれなど そんなこと言うな

何があろうと シアン俺はお前を

愛し､求めてしまったのだから────

第1話 求めるは覚悟→←設定

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