雪雲の上はお日様

嫌われ者の理由 ページ29

「なにして……」
「どうすれば、よかったのかしらね。
雑渡様と婚約したのに火傷した父が火傷痕を見て、勝手に破棄して。私は雑渡様がどんなお姿でも慕うつもりでいたのに、あの時無理してでも会いにいけばよかったのかしら。
そうすれば今頃……！ 日向のことも雑渡様のことも本当に好きなはずなのに二人が親しくなればなるほど気が狂ってしまうほど妬いてしうの。
もう、迷惑かけるのが嫌なの。こんなみじめな姿人に見せられない。
ごめんなさい、本当に、こんなお姉ちゃんで。本当に……」

予想していたにも関わらず頭が上手く動かない。どうにかしなくちゃ近江さんがと思っても殿様のときのように動けない。
お姉ちゃん。私のお姉ちゃん。
小さいころ私を捨ててそのままにしたお姉ちゃん？
助けたいと思うのにどこかもういいかと思っている自分がいる。

私が固まっているのを見て刃を腹にぴたりと当てがう近江さんが口を開く。

「貴方のことも小さいころから助けられたら、どれくらい救われたことか。暴君の父から救えたら。あの手を払えたらって……」
そんなこと、気にしないでなんて言えなかった。
何かかける言葉を探すが良い言葉が思いつかない。そうこうしている内に近江さんは何処か納得したような顔をして腹にズブ……と刃を沈ませ
「大好き……だよ。雪……」とだけ言い残し地面に伏せた。

呆然、その言葉がお似合いなくらいその場に立ちすくみ足元にじわじわと寄ってくる生暖かいものを見つめる。

「日向……？」

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