雪雲の上はお日様

見た目と位と ページ27

「雑渡様に婚約者ができたそうだ。なんと日向だとよ」
「お赤飯だね！ 楽しみだなあ」
「まさか日向ちゃんがねえ。よかったね！」

皆が嬉々とした顔で手を握ってくれる。
ありがとうございます。と答えるが内心は今すぐにでも穴を掘って地中に埋まりたい衝動があった。
大抵の人はこちらの気持ちは置いておいておめでとうと言ってくれるのだがちらほら、と媚を売ったや悪女だとか聞こえるように噂する。

「やあ、君が日向かい。よかったね、君みたいな子が玉の輿になって」
「おい、よせよ。まだ子供だぜ？」
子供の癖に大人に媚びつきやがって、ということか。
「ありがとうございます。貴方方にも出会いがあると宜しいですね」
「なっ！」
「では、失礼しますね」


「中々言うねえ」
「……雑渡様」
目上の人に自分の感情を、ましてや怒っていたりイライラしたような顔を見せながら対応するのは悪いことだと分かってはいるが顔が勝手にむすっとした表情を作り振り返る。
「怒ってる？ 何か言われた？」
さも、何が悪いか分からないとでも言うような物言いだ。
「……本当に意地の悪い方ですね」
「何が。私は日向が好きだから婚約したんだ。何か悪いかい？」
「私の了承は得ないのですね」
「絶対逆らうじゃない」
「当たり前でしょうに。底辺の私が、貴方のような慕われる方と婚約だなんて！ どのような目で雑渡様が見られるか」
「ふうん。そんなに大事？ 位とか見た目とかって」
「だとしたら、何故近江さんは婚約を破棄されたのですか。何故了承したのですか！」
一体何処から聞いたとでも言いたげな目で睨む。

「……向こうが勝手に破棄したんだよ。この身体を見てね」

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