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婚約と波乱万丈 ページ26

「遅いわよ。井戸端も良いけれどあまり長居はしないようにね」
近江さん宛の噂話が聞くに耐えれずそそくさと抜けてきた。
皆は冷たいって言うのだけれど、そんなことは無いように思えるのだが。
今だって多分気づいているのだろう。井戸端会議も全部を否定せず、やるべきことをやったら何しても良いと言ってくれている。

「近江さんは良い母になりますね」
これは素直な気持ちだった。母が近江さんのような人だったら……。特に母が悪かった訳でもないけれど。
「それはそれで嫌なことも沢山あるわ。それに……」
ボンヤリと虚ろな目をした近江さんの視線を辿る。
そこには山本様と話している雑渡様だった。
「あの、近江さん?」
「ああ、ごめんなさい。何でもないのよ。本当に」
あたふたとしては時折自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐのはこの人の癖なのだろうか。
それとも、今まさにそのような不安定なときなのだろうか。私には分からなかった。

「やあ、日向。それに近江。頑張っているね」
感心感心と目を細める雑渡様には少し腹が立つ。なんなのだろう、そのついで、みたいな近江さんの言い方は。
「近江さんに助けられてばかりです」
「そんなことないよ。私はちゃんと見てるからね」
「……ありがとうございます。それより、何かありましたか?」
「うん、日向にね。婚約の報告」
「雑渡様ですか?」
「うん」
「どちらの方と」
「日向と」
婚約……こんやく。雑渡様が日向様と。どこのお姫様だろうか……。

「それを何故私に報告を?」
「あちゃ〜、混乱してるね。いいかい。雑渡は私」
「はい」
「日向は君だよ」
「……えと、あ、え。は?」
「日向と私は婚約する。つまり夫婦になるんだよ」
日向と私は婚約する。婚約……こんやく。私と雑渡様が婚約する。
雑渡様の言葉を繰り返し唱える。その一つひとつの単語の意味を理解し、全部を繋げてようやくこの人が言っている意味が分かる。
これだけの手順をふまないと頭がヒートしてしまいそうだった。

「なぜ……日向と」
「文句でもあるか。近江。お前はもう関係ない。いつまでも自惚れるなよ」
「雑渡様!」
「何でもないよ、日向」
「ねえ、近江。いつまでも引きずっていないで。無駄な幻想なんか捨てて現実見なよ」
私と君は関係ないんだ、と吐き捨てたように呟いたと同時に近江さんの手がパァンと音をたてる。
「女房の分際で手を出すなんてね……」

「私は……!」
近江さんは消え入りそうな声で叫んだまま走り去っていった。

見た目と位と→←井戸端会議は恐ろしいもので



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設定タグ:忍たま , 雑渡 , タソガレドキ   
作品ジャンル:アニメ
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カナリア(プロフ) - 続き楽しみにしています!更新頑張ってください! (2015年5月31日 20時) (レス) id: 1223570c56 (このIDを非表示/違反報告)
文月 八重(プロフ) - ハイキュー,研磨LOVE☆《*≧∀≦》さん» ありがとうございます!頑張ります(≧∇≦) (2014年12月31日 8時) (レス) id: 4533d9e5f0 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー,研磨LOVE☆《*≧∀≦》 - 面白い!( ☆∀☆)キター続き楽しみにしてます!(* ̄∇ ̄)ノワクワク (2014年12月31日 1時) (レス) id: 7f5409c857 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:文月 八重 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2014年12月22日 21時

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