嘘つき ページ12
嗚呼、改めて分かりました。
雑渡様は嘘つきです。
私は今、中々威厳のある面持ちの方……黄昏甚兵衛様の御前です。
とても広い部屋にタソガレドキ軍の殆どの方が集まり、殿は私を舐め尽くすかのような視線を送られてきます。
「そこの者、名前は」
「い……日向と申します」
「日向……お主は南蛮人か?」
「いいえ……母も父も日本の者です」
「そうか……」
殿様はふう、と息を吐いた。
「儂はこの通り下働きのものも戦に使うものも多くいる。雇うのもタダではない。これ以上無意味な穀潰しを増やしてどうするつもりだ。雑渡よ」
殿様の言うことにぐうの音も出ない。
所詮私は拾われた身なのだから。
特別な力があるわけでも、何でもない。
「大体、こんな細い体で何が出来る。精々儂の部屋の前の廊下を拭くような事にしか使えない」
なあ、とこちらに圧力をかける。
生憎こんなことは慣れてるものだから効くわけではないのだけれど。
「……私はまだ八つで、十分に仕事をこなせるわけではありません。力も特別にあるわけでも、医学に特化していることもありません」
「なら一層いらぬではないか」
全くその通りだ。
「それとも戦に疲れた我らの身体を癒してくれるか?」
「いいえ。ただ、私には図々しい図太さがあります」
「ほお? そうやって逃げる者を儂は何人も見てきたぞ」
「医学の者が必要とあれば此のにある本を全て覚え治療をしましょう。戦に必要とあれば武術を身につけ貴殿の駒になりましょう。私の体はどう使われたって後悔はしません」
「そんな事が出来る体に仕上げると」
「はい」
「そうか……」
なら、と殿様はスッと立ち上がり刀をふるう。
つつ……と生温かい液体が頬をすべる。
「今ここで命尽きても文句は言えぬな」
「はい……!」
ぎっと眼を合わせる。
ぽた、と雫が落ちた。
「……そこまでの志しがあるのならばやってみよ」
この卑しい猫を、と刀を渡される。
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カナリア(プロフ) - 続き楽しみにしています!更新頑張ってください! (2015年5月31日 20時) (レス) id: 1223570c56 (このIDを非表示/違反報告)
文月 八重(プロフ) - ハイキュー,研磨LOVE☆《*≧∀≦》さん» ありがとうございます!頑張ります(≧∇≦) (2014年12月31日 8時) (レス) id: 4533d9e5f0 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー,研磨LOVE☆《*≧∀≦》 - 面白い!( ☆∀☆)キター続き楽しみにしてます!(* ̄∇ ̄)ノワクワク (2014年12月31日 1時) (レス) id: 7f5409c857 (このIDを非表示/違反報告)
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