私の名前 ページ11
「ただいま」
「あっ、組頭! いつさんとは仲直りされたのですか?」
「まあね。ねえ?」
「……はい」
まだ怒ってませんかと諸泉さんは雑渡様にコソ、と話すが怒ってはいない。
さっきは何となく場の雰囲気でそうでもなかったが落ち着いた今では耐えられない。
つまり、恥ずかしいのだ。
「すみません。うちの組頭が要らぬことをしたようで」
「大丈夫です。……え、と。失礼ですがどちら様で……」
「ああ、私は山本陣内です。組頭のああいうのは被害が大きくて」
なるほど、だから高坂さんがコソコソと端で小さくなっているのか。
と思っていると、高坂さんがスッと立ち上がり
「あれは私ではなく、組頭がしたことですからね」
大丈夫ですよ。とそれなりに相手をしているとそそくさとまた端で小さくなった。
「あ、陣左」
「……はい」
「拗ねるなよ。筆と硯、あと紙ある?」
高坂さんはまだ仕舞っていなかったようで、机の上にあるそれらをどうぞ。と渡す。
「何を書かれるのですか?」
「うん。この子の名前をね」
「名前って、いつでは駄目なのですか?」
「うん。私の下に仕える以上それは認めない」
頭の中で恥さらしってこと?と首を傾けると山本さんが物としていてほしくないという優しさですよと耳元で呟いてくれた。
「小屋にいるときとは違うんだからね」
「ふっ、……ありがとうございます。けれど……」
私には名前がと言おうとすると何か汲み取ったのか「それは内緒ね」と遮られた。
内緒という言葉に反応し端にいる高坂さんまでもがこちらをみる。
「内緒ねって何を?」
「ちょ、組頭教えてくださいよー!」
「教えちゃったら内緒じゃないだろ?」
そりゃ、まあ。と諸泉さんは小さくなる。
「そうだねえ。君の名前は……」
「日向……」
「君の目が暖かいからね。目はその人を語るんだ」
だから、と雑渡様は私の少し前にしゃがみ
「君は暖かい人。お日様のようにね。何かあっても優しく周りを照らすさ」
……!
「そんな……。こんな贅沢な名前……。私には……!」
泣きそうになっているのを隠すため渡された紙を顔の前まで持ってくるが、声が震えてバレバレだった。
勿体無いです……と消え入りそうな声で呟いた。
−−−−−−−−
「さて、名前も決まったことだし。殿に挨拶しなきゃな」
「殿……?」
そういえば……!すっかり忘れてた。
「あの、雑渡様。殿様はどんな方ですか?」
「優しいよ。怖くない」
「じゃあ近江さんにも会えますか?」
――ああ
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カナリア(プロフ) - 続き楽しみにしています!更新頑張ってください! (2015年5月31日 20時) (レス) id: 1223570c56 (このIDを非表示/違反報告)
文月 八重(プロフ) - ハイキュー,研磨LOVE☆《*≧∀≦》さん» ありがとうございます!頑張ります(≧∇≦) (2014年12月31日 8時) (レス) id: 4533d9e5f0 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー,研磨LOVE☆《*≧∀≦》 - 面白い!( ☆∀☆)キター続き楽しみにしてます!(* ̄∇ ̄)ノワクワク (2014年12月31日 1時) (レス) id: 7f5409c857 (このIDを非表示/違反報告)
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