BLACK TrackONE【4】 (ページ10)

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Side BLUE

「しかし、一卵性双子のHLA型一致率は、100%で、拒絶反応等も起きません。」

「俺なら、…北斗に移植できるの？」

「健康診断で問題なければ、ですが」

ジェシー先生は、にっこりと微笑んで、頷いた。

「…でも、樹、1ヶ月後…受験があるんだよ！
移植ドナーになったら、何度も病院に来て、入院しなきゃいけないって…ちゃんと聞いてたの？」

「聞いてたに決まってんだろっ！
……俺、北斗が何と言おうとやるよ。」

「落ち着け、！」と父さんの低い声がして、
声が大きくなっていたことに気づく。

「…母さんよく、言ってたよ。
お前たちが今みたいにしょっちゅう喧嘩するから。

似てないから二卵性だって言われるけど、あなた達は紛れもなく最初から1つを分け合って産まれてきたって。
きっとそれに感謝をするときが来るって。
そんなの、今しかないよ。」

父さんはまたポロリと涙を流した。

「俺からも頼む。樹にしか頼めないことだよ。

時期については、…2人の受験が終わってからでも良いですか？
…北斗もこれまで勉強を頑張ってきました。
退院は、…できませんか？」

俺とジェシー先生に順番に頭を下げる父さんに、胸の奥がざわめいた。

「……保存療法と言って、
輸血等で症状を軽減させる治療法だけを行い、
移植等の積極的な治療を行わない場合、
生存率は半年で約50%、
一年で30%を切ると言われています。

…治療法を遅らせると、北斗くんの体力が下がり感染症を引き起こす可能性もあります。

今は混乱してると思うけど…北斗くん。
生きていたら、いつでも何でもできること、忘れずにね。」

ジェシー先生はゆっくりと北斗の肩をさすって、
病室を出ていった。

「………出ていって、…もう帰れよ！！
1人してくれよっ！…勝手に頭を下げるなよ！俺の問題だ！」

バサバサバサッ、と音を立てて、
ジェシー先生が丁寧に蛍光ペンや赤丸をしてくれた資料たちが、床に落ちた。

……まるで、受験勉強に使った教科書みたいだった。

「…やだ。ぜってぇやだ！
ずっと、一緒にいる。俺は分かってるよ。怖いよな
俺もだから。…けど絶対、すぐに移植して、大学のチャンスは来年に回したって、後悔はしないと思う。」

北斗を横から抱きしめる。
すると北斗は、ただただ俺の腕をギュッと掴んで、
声を上げて、泣いていた。

母さんが、死んだ日は逆だったな、と
関係ないことを考えた。