橙色のカーネーションに誘われて【スタマイ】

「壊れてからも優しいまま」/ 服部耀 ◆ ページ37

＊REQUEST-貴女→耀→玲 / 切恋→切甘→ハッピーエンド-





A「あの…、私、耀さんが、すき、なんです…、」


結果なんて、初めから分かっていた。
私なんかが、玲さんに敵うはずないって。

玲さんこと、泉玲さんとは耀さん経由で知り合った。
厚生労働省麻薬取締部捜査企画課に所属する国家公務員。


玲「ここのカフェラテとケーキがすごく美味しいんです！」


人見知りしやすい私でも初対面で人の懐に上手に入り込んできた玲さん。

一方で私はと言うと…、昔から引っ込み思案で消極的で、物静か。
耀さんとは、近所に住んでいたこともあって、昔からの知り合い。
大学は教育学部を卒業し、今は高校の英語教師をしている地方公務員である。

国家公務員と地方公務員。
これだけでも差があるというのに、どんな時でも全力で仕事に取組むその姿は、すごくかっこよく見えた。



A『私なんかが…、勝てる相手じゃない…』

服部「ん、ごめん、A。Aのこと嫌いじゃないけど、ねえ…、」


こんな時ですら、耀さんは優しさを見せる。
玲さんには、優しさや厳しさ、全部を見せるのに。

いつしか、耀さんの玲さんを見る目が何か違う。そう気づいてから確信に変わるまではあっという間だった。


A「ですよね…、ダメ元でした、実は。はは。耀さん、私みたいなのタイプじゃないもん、ね…」


涙が溢れそうになるのを必死でこらえ、言葉を噤む。


A「玲さん、のこと、好きでしょ…、耀さん、分かりやすいもん」


違う。耀さんはわかりやすくなんてない。
どんな時だって、冷静に本音を隠す。誰もわかりやしない。

でもそれがわかってしまうのは…。


服部「マトリちゃんのことは大事にしているつもりだけど。愛情とかそういうのは、どうだろうねえ。ただの可愛いワンコ。」


嘘。


そうやって、玲さんの名前を出す度に、愛おしそうなその顔で、声で。
クリアに聞こえ、抉られた心臓。その声は全て、私の耳をすり抜けていく。


A「私、応援する。耀さんのこと…、」


そう吐き捨てるように言った精一杯の虚勢。

それ以降のことは、何も覚えていない。




.

「壊れてからも優しいまま」２→←「痛いほどに、愛してる」７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す