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 キュレムside



上体を起こし、優しい表情で私を見るA。

しかし私はAを横目でしか見る事ができない。

Aを見ているとなぜか抱きしめたい衝動に駆られる。



シナモン『Aが起きたら言いなさいよ?』

マツバ『僕達と一緒に行く事を知らないからね』

シナモン『何なら山に戻ると思ってるんじゃないかしら』



Aの側にいたい…

言え…

言え…



出てこない…

言葉が…



反応が怖くて…

言えない…



「キュレム…」

キュレム「ん?」

「あの…その…」

キュレム「何だ…早く言え」



















「側にいるから…側にいて…」



















まるで砂浜の足跡を攫っていく波のように。

心の傷が、悲しみが、苦しみが、消えていく。

痛みだけでなく傷跡さえも消し去る。

Aが、Aの言葉が、私の傷を癒やす。



何の為に生まれてきたのか。

何の為に生きているのか。

理由などわからない。

理由を探しもしない。



しかしこの瞬間。

私は自分の存在意義を見つけたのだ。



私はAと出会う為に生まれてきた。

私はAと出会う為に生きてきた。



嬉しさ、喜び、安堵、感謝。

多幸感の溢れる感情を抱かせてくれる存在。



目の奥が熱い。

今にも涙が溢れそうなのを必死に堪える。



どれだけ傷付けられようと流さなかった涙。

涙も出ないほど深く傷付いていたのだろう。



「キュレム…」



名前を呼ばれた事で堪えていた涙が溢れ出す。

私はAに気付かれないように背を向けた。



















数百年前の私に伝えたい。

辛い日々を過ごしている事だろう。

しかしもう少しだけその日々を耐えてくれないか。



耐え抜いたお前を癒やす存在が現れる。

お前の心を癒やし、包み込んでくれる存在が。



お前は本人を前にすると素直になれない。

今までの経験がそうさせるのか。

それとも生まれ持った性格なのか。

ただその心に抱いている感情に嘘はない。



お前はAと言う女を守る決意をする。

そしてどうしようもないくらい好きになる。

直視もできないほどに。



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はる - 応援してます! (9月12日 15時) (レス) id: 711a76c71a (このIDを非表示/違反報告)
トモ(プロフ) - はるさん» ありがとうございます!そう言って頂けて嬉しい限りです!更新頑張ります! (9月12日 6時) (レス) @page50 id: ba8d882ed0 (このIDを非表示/違反報告)
はる - とても面白い作品でした。このあとの話がとっても気になります!更新を楽しみに待ってます。 (9月10日 21時) (レス) @page48 id: 711a76c71a (このIDを非表示/違反報告)
トモ(プロフ) - リサさん» 更新日時等は未定です。私自身が素敵だと思える作品を読者様にお届けしたいので更新頻度に波があるかもしれません。更新を楽しみにして頂きありがとうございます。 (9月4日 22時) (レス) id: 1e3db49e75 (このIDを非表示/違反報告)
リサ(プロフ) - 次の更新はいつですか? (9月4日 21時) (レス) @page47 id: a9b99ba3cf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トモ | 作成日時:2023年7月23日 22時

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