雪の妖精と人 ページ32
昔ある所に雪結晶の如く可憐で美しい少女が茨の谷に居た。
その女性の背中から透明な羽を生やしている。
妖精の羽だ。
彼女が手を振ると雪が降ってくる。
それだけではなく、水上に立てば凍る。まるでスケートをするように水面を凍らしていき曲線を描く。
その様子をリリアは微笑ましげに見た。
リリア「今日は一段と機嫌が良いのう、セレーナ」
セレーナと呼ばれた女性は「お爺さま」と言った。
「今日は素敵な方と会ったの。」
リリアは「誰じゃ?」と気を良くして聞く。
「えっと、黒い髪をした方だったわ。暗い空のような黒い瞳がとてもロマンチックなの。…名前聞いとけば良かったわ。」
しょんぼりとセレーナが言うとリリアは「また会えば良かろう。」と言った。
「そうよね。」とセレーナは白く美しい雪の髪を揺らして笑った。
リリアとは対照的なサファイアの瞳がキラキラと輝いている。
リリアは青い気持ちを出すセレーナを好ましく思った。
セレーナは想い人に会った。
セレーナは勇気を出して話しかける。
リリアは物陰でこっそりと見守る。
セレーナが「こんにちは。」と言うと男は軽く会釈をして本を読む。
男は確かにセレーナの言う通り黒い瞳をしていた。
座っている男の隣にセレーナも座る。
「私、セレーナ。貴方の名前は?」
明るいセレーナとは対照的に男は暗かった。
「グロウ。」と男が言うとセレーナはニッコリする。
「そうなのね。」
セレーナは本を覗き込む。グロウが読んでいるのはケンタウルスの話だ。つまり魔法史である。
リリア(見た所、男は15歳くらいじゃのう。こうして見ると大人びているせいで、セレーナが12歳のようじゃ…)
セレーナ「ケンタウルスの話ね。メスとオスが結ばれる話だったね。グロウはこう言う話が好きなの?」
グロウは首を横に振った。
堅くじっとした雰囲気でいるグロウの感情が分からない。
セレーナは構わず話しかけようとする。
グロウは不快な顔はしないが、気にしないのか気にしてるのかイマイチ分からない。
本は次のページに進み、ぽっちゃりした男性がメスのケンタウルスと踊っている話に変わる。
束の間で突然の豪雨で避難する事になったが、晴れて虹が出てユニコーンやケンタウルスがはしゃいで終わりだ。
ハッピーエンドだ。
パタンと本を閉じるとセレーナは「素晴らしい話ね。」と言った。
少しだけグロウが瞬きしてセレーナを見つめる。
その瞳には
花が回るような気持ちになったのである。
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たろ。(プロフ) - パ、パ、パ、パパぁ!!!!! (2022年7月7日 15時) (レス) @page9 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柳玲霊鑑 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/be moon
作成日時:2021年11月28日 19時