69 拒絶の果て ページ19
グラジオはこの頃、目の前の暮らしが嫌になっていた。それで、このラボに隠れていたのだ。
大人の求める完璧を目指さなくてはならない。
いつしか振る舞い方を限定され、正直好みではない服を着ていた。
それまでの自分の何がいけなかったのか、何が『失敗』だったのか定かでは無いが、自分の意志に反してでも言われた通りにすることを、母は喜んでいた。
オレも、ガラスの中の三匹と同じ、無表情になって眠っているようなもの。
「・・・本当は、何タイプになりたいんだ・・・？」
なりたいタイプに、なったって良いんだぞ。
答えないポケモンたちにそう念じながら、グラジオはその場を後にした。
次にラボを訪れたとき、三匹のポケモンの顔には、仮面が取り付けられていた。
「オマエらのこと、少し調べた・・・。ARシステム、拒絶したのか。・・・なかなかやるな。それとも、システムを受け入れたくて、出来なかったのか・・・？」
何となく、三匹が自らの意志で、システムを拒絶したと、そう思いたかった。
グラジオにはまだ、『親の言う通り』を拒絶することが出来ずに居て、三匹の意志ある拒絶が、誇らしいような気がしていたから。
四度目に、グラジオがラボへ行ったとき。
「あと一度、ARシステムを拒絶すれば・・・凍結されるのか・・・？オマエら、どうするんだ・・・。」
書類を見ながら、浮かない顔をした。
そして、五度目のラボ侵入を果たしたとき。
「・・・・・・。」
拒絶したらしい。
ファイルに加えられた、『永久凍結決定』の文字。
「もう、オマエらが受ける、次の実験は無い・・・それでもまだ・・・。」
まだ・・・フルに近付ける研究を受け続ければ、いつかは完璧になれると信じているのか。
あと数分で、三匹とも、動けなくなるような冷気に晒される。
自分の意志で生きてみないか。
そう誘い出し、あの日救い出せたのは、ただ一匹。
それが、あの日の真実だった。
夢の欠片・・・オレたちが見たかったのは、こんなものではない・・・。オレがAに見せたかったのは、こんなものではない・・・！
財団の中で起きていることを、信じたくは無かった。
起こってしまった以上、変えなければならなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カーター(プロフ) - 物部さん» 初めまして！ご感想ありがとうございます！戦闘シーンの文を褒めていただけるのは初めてでとても嬉しいです！文字だけでどれだけバトルの臨場感を表せるか、書き手としてもバトルしています！難しい場面ですが、続きの更新も頑張ります！ (2017年2月10日 23時) (
レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 初めまして。戦闘シーンも綺麗な文ですね。続き楽しみにしています！ (2017年2月10日 23時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - 真季さん» ご感想ありがとうございます！あんな感じで良かったでしょうか、自分では考えていない展開だったので、小説の世界を広げられるアイディアをいただけてとても嬉しかったです！続きも先程UPしましたので是非お楽しみください！モーテルの方も更新頑張ります！ (2017年2月6日 23時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
真季 - ピジョンの進化シーンいれて頂けて嬉しかったです！ありがとうございます。カーターさんの作品、モーテルパラダイスも楽しく読ませて頂いています！最新頑張って下さい(*^^*) (2017年2月6日 21時) (レス) id: b95c01deac (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - 真季さん» 今後の展開のリクエストにつきまして、実は次回から最終話直前までの下書きがまだゼロなので←！ 実現可能かこの場での明言は避けますが、勿論！試作検討してみます！万一ご希望に添えなかったらごめんなさい…！貴重なご意見ありがとうございます！ (2017年1月24日 22時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カーター | 作成日時：2017年1月13日 17時
