【ブルーロック】レモンティーは愛と優越感でできている【短編集】 (ページ7)

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それから暫くの間、私はスペインで日々を過ごした。
着るものだけでなく、新しいスマホや生活に必要なものはほとんど用意されていて、冴ちゃんがサッカーの練習や他のお仕事で家を空けているときでも、何の不自由もなく生活させてもらっている。

ただ、何故かいつまで経っても靴だけは忘れてしまうらしく、スペインに来てから外出できていない(ここに来るとき履いていた靴は、制服と一緒に何処かに片付けてしまったらしい)のが少しだけ不便ではある。

冴ちゃんから渡された新しいスマホには、私の両親と冴ちゃんのご両親、凛ちゃん、あとはブルーロックの知り合い数名の連絡先が登録されていて、編集や追加ができないよう設定されていた。ほぼほぼキッズスマホみたいなもんだったが、普段から連絡を取る相手がこの数名の中に収まっているので、全然問題がない。

とまあそんな感じで、本日も冴ちゃんの選んだシンプルだけど肌触りのいいターコイズブルーのワンピースを着せられ、ソファに寝転ぶ冴ちゃん専用のクッションの役割を務めている。
しかし今日は、また思考を融解される前に、気になっていることを口にしてみた。

「ねぇ冴ちゃん、私いつ日本に帰ればいい？」

その瞬間、空気が凍った。

部屋の気温が体感3℃くらい下がった気がする。
あ、これはマズイかもしれない。
やっちゃったな〜なんて呑気に後悔していると、体勢が一転して、私がソファに組み敷かれる形となった。

目を見なくても分かる。めちゃくちゃ怒ってる。

「おい…こっち見ろ」

…バレてた。
ここで反抗すると後々どうなるか分かっているので、大人しく言うことを聞く。

…冴ちゃんの言うことは絶対なのである。ぴえん。

「日本に帰りてぇのか」
「帰りたいっていうか…そろそろ春休み終わるんだよ？大学始まっちゃうから、帰らないと…」
「そんなもんオンラインでどうとでもなるだろ。俺がなんとかしてやる」
「えぇ、そういう問題かなぁ？」
「うるせえ、高校卒業するまで待ってやったんだ。もう逃すわけねぇだろ」

別に逃げたい訳じゃないんだけどな…
イマイチ噛み合ってるんだか合ってないんだか分からない。
冴ちゃんは暫し眉根を寄せていたが、ふと何かを思い出したように立ち上がり、ゴソゴソと鞄の中を漁り始めた。そして小さな紙袋を見つけ出すと、ソファに転がったままだった私の左手を引き起き上がらせる。