雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ39)

今日:11 hit、昨日:248 hit、合計:1,583,825 hit

退屈な授業ページ39

.

午後の最後の授業。

本日の経営学は菊見が担当していた。
担任が出張で不在なので、朝のホームルームからこの男は教室にいる。

「じゃあ、次のページを開いて」

指示に従い、力なく教科書のページを捲る。
教科書の内容を口にしているだけの物足りない授業に嫌気がさす。
黒板の文字をノートに書き込む気にもなれない。

こんな身にならない授業なのに、クラスメイトらは何も意見しない。
普段ならば少しでも教師が雑談を挟めば「早く授業を進めて下さい」と先を急ぐように誰かが言うのに。

(退屈……)

窓際の最後尾という絶好の位置を数日前のくじで引き当てたAは、ぼんやりと外を眺めていた。
名指しされた時に答えられるよう、耳だけは傾けて。

運動場にはＡ組の生徒がいた。
コスチュームでなく体操服でトラックを走っている。
個性を使っている様子がないので、純粋に持久走での体力測定なのだろう。

Aは一定のリズムを保って走る焦凍を目で追う。
最後にラストスパートをかけた爆豪と並んでゴールしていた。

案の定、どっちがはやくゴールしたかと議論している２人を見て、笑みがこぼれた。

(あとで同着だったって教えてあげよう)

授業が終わる３分前。
外にいたＡ組の生徒は校舎へと戻っていった。

この退屈な授業はあと３分も続くのかと思うと憂鬱だ。
菊見の声を聞き続けるのも疲れてきた。

(焦凍の声で上書きしたい……)

ようやく終わり、ホームルームの時間……と思いきや、クラスメイトは一斉に立ち上がって鞄も持たずに教室の外に向かった。

(あれ？学年集会かなんかあったっけ……？)

そんな連絡は聞いていない。
聞き逃したのだろうか。
不思議に思いながらも、Aは席を立って教室の後ろの扉へと向かった。

クラスメイトの背中を追って教室を出ようとすると、ふいに腕を掴まれた。

(え……？)

教室に戻るように腕を引かれたかと思うと、パタン──と背後で扉が閉められる。
Aの腕を掴んでいるのは菊見だった。
掴まれている腕の感触が気持ち悪い。

──離してください。

そう言ったはずなのに、動いたのは口だけで声を発することができなかった。
いやな予感が体中に伝わる。

「やっと２人きりになれたな、A」

菊見はうっすらと不気味な笑みを浮かべて見下ろしていた。

.