雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ19)

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兄と電話ページ19

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職場体験中は学校から割り当てられたホテルに宿泊する。

Aはロビーのソファーに座り、スマホから聞こえる兄の声に耳を傾けていた。
部屋は電波が弱くて不安だったので、比較的電波の良いこちらに移動していた。

『何か困ったことはなかったか？』
「うん、大丈夫だよ」
『爆豪とは……』
「私と爆豪君は体験内容が全然違うから別行動だよ」
『そうか……』

ほっとしたように呟く声。
心配性な兄は、行動が荒くて暴言の多い爆豪と一緒いるのが不安なのだろう。

『お前が来ないと知って、親父、すんげぇがっかりしてた……』
「あはは～」

自分の事務所に来ると信じて疑わなかった父親は、当日まで確認しなかったらしい。
はりきって出迎えたが来ていたのは息子のみ。

平常を装ってはいたが、内心がっかりしていたのは誰の目から見ても明らかだったとか。

「っていうか、体育祭が終わってからお父さんが変なんだけど……」
『構ってやりたいんだろ、お前のこと』
「今更？」
『今まで放っておいた分、余計に』

Aにしてみれば、「何だそりゃ」である。

叔父夫婦が出張で不在なので、体育祭が終わってからは夕食とお風呂は本家でお世話になっている。

居間で寛いでいると、ちらちらと父親の視線が気になる時がある。
話しかけたくてもAは焦凍にべったりなので、きっかけがつかめないようだ。

(……ん？)

隣に人が座った重みでソファーが傾いた。

ちらっと横を盗み見ると、不機嫌な顔をした爆豪がふんぞり返って座っていた。
髪がところどころ平で分け目を８：２に矯正された名残りがある。

「ぷ……っ」
『どうした？』
「ううん、なんでもない」

見た瞬間、思わず吹き出しそうになって、なんとか堪えた。

しかしそれを見逃さなかった爆豪は、ギっと目尻を上げてAに体重をかけて倒れかかった。

(ちょ、重っ、なにするの……っ！)

ソファーの肘掛けと爆豪に挟まれて逃げ場がない。
このままでは潰されてしまう……！
そう思って体を捩れば、圧迫する重みは消えた。

『親父もなんだかんだ言ってAがかわいいんだよ。うざいけど少しは……』
「へっ？」
『え？』
「いや……うん、大丈夫。ごめん」

目の前の状況が飲み込めなくて、焦凍の話を途中で遮ってしまった。
そのあとも生返事しかしていない。

なぜなら──

(どうして私は爆豪君に膝枕をしているんだろう……)

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