雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ20)

今日:19 hit、昨日:135 hit、合計:1,583,585 hit

心配事ページ20

.

太ももの上にあるのは間違いなく爆豪の頭。
すぐに離れるかと思ったが動く気配はなかった。

どいてくれという意味を込めて頭を軽く叩いたが、まったく反応はない。

『さっきからどうした？体験初日で疲れたか？』
「あー……うん」

この状況を説明すべきだろうか。
でもなんて言えば良い？
“爆豪君が私の太ももを枕にしてるんだけど”……って？

『疲れたんなら、今日はこのくらいにしとくか？』
「え！？ううん、もっと焦凍と話したい！ねぇ、焦凍は今日、何したの？」

気を使った焦凍が電話を終わらせようとした。

顔が見れない分、せめてもっと声を聞きたいAは太ももにある重みよりも兄との通話を優先した。

『俺か？親父とパトロールしてた』
「どこ？」
『……親父が日課で巡回してるところ』

パトロールの場所を聞けば、焦凍は少しだけ間を置いて答えた。
それがどうにも気になった。
もしかして──

「ヒーロー殺しが出た場所も？」
『……管轄外だが、一応』
「そう……」

保須市に出没するという「ヒーロー殺し」の噂。
交戦したプロヒーローに重傷を負わせ、再起不能にしたと聞いた。

(そこに焦凍がパトロールに……)

父親が一緒なので心配ないと思うが、それでも心配なものは心配だ。

ヒーローの卵で実力もあるとはいえ、まだ学生だ。
もしパトロール中に出くわしてしまったらと思うと……。

(杞憂であれば、それでいいのだけれど……)

＊＊＊＊

話題は移り変わり、２人は他愛ない会話で盛り上がる。

電話の向こうで『焦凍ーーーーっ！』という声とともに、扉が開く音が聞こえるまでは。

言わずもがな父親だ。

『電話中だったか。相手は誰だ？もしかして──』
『学校のヤツだ』

そこで通話は途切れた。
期待を込めた父親の声から、電話の相手はAなのではと訊こうとしたに違いない。

その言葉に被せるように否定した焦凍は、詮索される前に素早く通話を切った。

(あー……)

状況を察したAは、今日はこれでお開きか……と肩をすくめた。

さて、明日の準備をして休もう。
──と思ってソファーから立ち上がろうとして、自分の足にある重みを思い出した。

視線を落とすと、さっきと同じ体勢で太ももに頭をのせている爆豪。
規則正しく繰り返される呼吸と上下する肩に嫌な予感がする。

(えっと……完全に寝てるよね、コレ)

.